とんかち、かなづち、ハンマー、ゲンノウ。名前は違いますがこれらは全て“つち“、つまりハンマーと呼ばれる道具の一種です。使い方はほぼ同じで柄を握り先端の打撃部分を対象に振り下ろすことで、ものを叩いたり、金属などを変形させたり、釘などを打ち込んだりします。日本語ではこの先端の打撃部分が木製のものは槌(つち)、金属製のものは鎚(つち)と明確に漢字で区別して表記されます。ハンマーはとてもシンプルな道具で使い方に特に難しいこともないため、誰もが一度は使ったことがあるのではないでしょうか。そんなハンマーについて、形や種類の違いなどや、選び方、使い方のコツなどをご紹介します。
ハンマーとは
“つち”を英語で表記したのがHammer(ハンマー)。つまりこれらは基本的には同じものをさしています。つち、ハンマー中でも最も一般的なものがかなづちです。その名の通り先端の打撃部分が金属でできています。かなづちは一般的に片方が打撃用、もう片方がくぎ抜きなどになった片口タイプ。そして両方が打撃に使用できる両口タイプ。さらに、片方が球状になった片手ハンマーなどがあります。また、その打撃部分の形状にも様々なタイプがあり、使用目的が異なります。ほかにもハンマーには打撃部分が木製の木づちやプラスチック製のプラスチックハンマー、ゴム製のゴムハンマーやゴムとプラスチック2種類の打撃部をもったコンビネーションハンマーなども存在します。多くの場合、鉄製のものは、各種打撃作業や釘などの打ち込み、板金作業に使われ、樹脂製やゴム製のものは固着した部品の分解や各種シールの挿入などに使われます。
ハンマーの種類や素材の違い
ハンマーには素材や形などによって様々な種類があります。使用する目的によって、使い分けるのですがその中でも代表的なハンマーと、それらの特徴を紹介します。
◆ 片手ハンマー
頭部の片側が平らで、反対側が球状になった金属加工用のハンマーです。平らな方は釘やピンなどの打ち込みに、球状部分は鉄板などの曲げ加工などに使用します。
◆ 両口ハンマー(両口ゲンノウ)
片側が平らでもう片側がゆるい曲面になっているハンマーです。片手ハンマーより大きくて重いため釘の打ち込みなどにむいています。
◆ 両口ハンマー(八角ゲンノウ)
断面が八角形になった両口ハンマー。平面になった側面部分も釘などの打ち込みに使用可能です。狭くかなづちの打撃面を振れない場合に側面を使用します。
◆ 片口ハンマー(唐紙づち)
打撃部分の一方が尖っていて小さな鋲などの打ち込みや、狭い場所に釘打ちをしたい場合に使用します。
◆ ネイルハンマー
西洋から入ってきた金属製のハンマーです。重心が打撃面に近いため釘打ち時に安定します。また片側が釘抜きになっています。
◆ ショックレスハンマー
頭の内部に小さな鋼球が入っていて打ち込んだときに反動を吸収してくれるハンマーです。
◆ 木づち
打撃部分が木でできた小型のハンマーです。木工製品のダボへのはめ込みなど部品などに傷をつけたくない作業に使用します。
◆ プラスチックハンマー
頭部の打撃面がプラスチックでできたハンマーです。重心部は金属製なので打撃力も確保されています。叩く対象を傷めにくいハンマーです。
◆ ゴムハンマー
打撃の際、跡が残りにくいので木工製品の組み立てなどの際に直接叩くことが可能です。樹脂ハンマーより重量があるため打撃力も高いのが特徴です。
ハンマーの選び方と使い方
ハンマーは形が違うだけでなく、頭の大きさ、重量も様々です。通常は頭の重さで分けられており重いものほど釘などを打ち込みやすくなります。しかし、あまり重いと持ち上げるのにも力が必要になり、振りにくくなるので扱いやすいものを選びましょう。
◆ ハンマーのサイズ
かなづち、ハンマーなどのサイズは、多くの場合重さで表示されています。昔からの日本の重さの単位、匁(もんめ)をグラムに換算したものが使われており、ハンマーの柄などに表記されています。ゲンノウの標準的なサイズは100匁=375グラムです。それに対して金エ・鉄工用のハンマーの場合は120匁=450グラムほどが標準とされています。この450gは=1ポンドでもあるので、このサイズのものは1ポンドハンマーとも言われます。
◆ 選ぶ際のポイント
大工仕事などに使用される両ロゲンノウは100匁=375gや120匁=450gが使いやすい重さとされています。しかし、実際に握り振り上げてみて重すぎると感じる場合はそれよりも軽いもの、例えばネイルハンマーなどを選ぶとよいでしょう。また握った際の重心も大切です。両ロゲンノウの重心は頭部の柄が直交する中央部ですが、ネイルハンマーの場合は打撃側よりも釘抜きの側が軽いため重心が打撃面に近くなります。そのため握った際に打撃面側が真下に向きやすく、上から下へと釘を打つ場合、両口ゲンノウよりもコントロールしやすくなります。ただし打撃力では両口ゲンノウに劣ります。実際にハンマーを振ってみて自分がコントロールしやすいものを使いましょう。
◆ ハンマーで釘を打つ方法
まず、木材に錐で下穴を開けます。次にその穴に釘を立て、ハンマーの柄の頭に近い部分を握り釘が自立する程度軽く打ち込みます。次に柄の先端に近いほうを軽く握り、ヒジを支点に手首のスナップを効かせながら、頭の重さを利用して振り下ろします。
◆ 両口ゲンノウの場合
使用するハンマーが両口ゲンノウの場合は、釘うちの際に打撃面を使い分けます。両口ゲンノウの打撃面はよく見ると片側が平面、もう片側はゆるい凸状の曲面になっています。釘打ちは基本的に平面側を使用しますが、最後の仕上げの打ち込みには曲面を使用します。この曲面は木殺しといわれ、釘の頭をしっかりと木材などに打ち込み、木材の面にそろえることができます。さらに、凸状のため、木材などの表面に跡が残りにくいという特徴があります。うまく使い分けてみましょう。
両口ゲンノウの平面側。基本はこちらで釘を打ちます。
両口ゲンノウの曲面側。最後の仕上げに使用します。
まとめ
釘などの対象物を叩くというシンプルな道具、ハンマーは大きさや素材以外、違いがわかりにくいかもしれません。しかし、ここで紹介したように実は用途によって様々なタイプがあり、合わないものを無理に使うと木材や金属板などの材料に大きなダメージを与えることもあるのです。用途や目的、自分の体力に見あったもの選び、作業の内容に合わせてしっかり使い分けましょう。