コンベックスの種類

部屋の模様替えや家具の買い替え、さらに建築現場やDIY作業で何かを作る際にも、とても大切なこと。それは材料の長さや厚み、設置のスペースなどのサイズを正確に測ることです。正確な寸法が分からなければ、部屋のスペースに合った家具も選ぶことはできませんし、またDIYでも正しく作業を進めることができません。
そんな大切な寸法を測るために必要な道具がメジャーやスケール、コンベックスと呼ばれるものです。この中でもプロの現場の必需品であり、DIYや模様替えにも便利なのがコンベックスです。
コンベックスと言われてもあまり耳慣れないかもしれませんが、誰もが一度は目にしたことがあるはず。テープ部分がスチールやステンレスなどの薄い金属製で、そのテープの断面が凸状になった巻尺のことです。
コンベックスは樹脂や繊維製の巻尺と違って、テープを伸ばしても折れ曲がりにくく、水平や垂直に伸ばした際にも保持性があります。また、先端にツメがついているため、一人でも簡単かつ正確にさまざまな物の寸法を測ることが可能です。一つあると、家庭でもとても重宝するコンベックス。その特長や選び方などを紹介します。


目次
1章:コンベックスの特長
2章:コンベックスでできること
3章:テープに使われている素材・幅
4章:ツメの種類
5章:コンベックスの選び方
6章:JIS規格
まとめ


1章:コンベックスの特長

断面が凸状の金属製巻尺

金属製のテープを使用した巻尺、コンベックスは、正式な名前を「コンベックスルール」といいます。断面が凸状になった金属性のテープに目盛りが印刷されていて、またそれを巻き取ることができる巻尺です。さらに、伸ばした状態でも折れ曲がることなくその状態を保持することができるという大きな特長も持っています。
巻尺やメジャーなどと呼ばれることもありますが、コンベックスの定義はおおよそ以下の通りです。

  • 1、
    目盛りのあるテープ部分が金属製で断面が凸状になっており、伸ばした状態での保持性を持っていること
  • 2、
    テープの先端に0基点となるツメがついていること
  • 3、
    スプリングが内蔵されており、テープを引き戻す機能を持っていること

単なる巻尺ではなく、このような特長を持っているのがコンベックスというわけです。その長さや目盛り表記にもバリエーションがあり、用途によって選ぶことが可能です。

2章:コンベックスでできること

保持性があるので一人でも簡単測定ができる

コンベックスは先端にツメがついています。そのため、測りたいものにそのツメを引っ掛けることができます。長さのある物の寸法を測る場合でも、そのツメを対象の端に引っ掛けてそのまま本体を引っ張れば、テープ部分がそのまま伸びた状態で保持されるので、あとは目盛を読むだけで正確に寸法を測ることができます。
対象物、またはスペースにツメを引っ掛ける場所がない場合でも、手でテープを引き出し、そのままロックすることができますので、水平でも垂直でもその状態を保持することが可能です。例えば天井までの高さを測りたいという場合でも、テープを引き出してロックすれば、簡単に測ることができます。
テープ部分にはロック機構がついているものが主流ですが、ロックの仕方にタイプがあります。
引き出したテープが自動で固定されるオートロックタイプ。ボタンを押してロックするタイプ。そしてロック機能自体がついていないタイプの3種類です。これらは作業内容や、使用する環境に合わせて使いやすいものを選ぶと良いでしょう。

3章:テープの材質、幅

幅が広いほど折れ曲がらずに測定できる

コンベックスのテープ部分は、凸状に湾曲した薄い金属でできており、その材質には主にスチールかステンレスが使われています。スチールはスタンダードな材質でコストパフォーマンスや耐久性に優れており、また折れ曲がりにも強いという特長を持っています。
さらに水やサビに強く、雨の日の屋外での作業でも安心して使用できます。また汚れた際にも、サビを気にせずに水洗いすることが可能です。
金属製のテープ部分には、耐久性や視認性を向上させたり、サビにくくするため塗装や樹脂コートが施されているのが一般的です。コーティングにも様々な種類があり、スタンダードなものがポリエステルやアクリル、エポキシ樹脂などによるコーティングです。
ほかには耐久性をさらに高めたナイロンコートや、サビや折れにも強いデュラコート、反射防止効果があり、視認性を高めてくれるシリカコートなどもあります。
材質だけでなくテープの幅や伸張性能にも違いがあります。伸張性能とは、自重によって折れ曲がらずにまっすぐ立つことのできる長さ。一人で長いものを測定する場合は、伸張性能が高いものを使うと作業しやすくなります。
この伸長性能は基本的にテープの幅に比例します。幅が広いほど対象から浮かせた状態でも長い距離を測ることが可能です。しかしその分、金属のテープの幅が大きくなるので、当然コンベックス自体も重くなります。
テープ幅はだいたい6mm~27mmまで、様々なものから選ぶことできます。その中でも代表的なものは「13mm」と「16mm」、「19mm」です。
それぞれどれくらいの伸長性能があるかというと、製品にもよりますが、13mmタイプならだいたい対象から浮かせた状態で、水平方向なら1.1m、垂直方向で1.5mまで測ることができます。幅が16mmのタイプであれば、水平方向で1.4m、垂直方向で2.2m。さらに19mmであれば、水平方向で1.8m、垂直方向で2.8mを楽に測ることが可能です。テープの幅によって、こういった違いがあるということも、コンベックスを選ぶ際には参考にしてください。

4章:ツメの種類

固定ツメと移動ツメの違いとは

コンベックスのテープ先端にあるツメは、測る対象の端に引っ掛けて使用しますが、そのツメには固定ツメと移動ツメの2つのタイプがあります。
固定ツメは、その名のとおり先端部分にしっかりとビスなどでツメが固定されたタイプです。
この固定ツメは、測る対象物の端に引っ掛ける測定方法のみ使用可能となります。なぜなら、ツメが固定されていると、引っ掛けることのできない箱の内側などを測る際、ツメの厚み分だけ誤差が生じてしまうからです。
そういった用途にも使うなら、移動ツメが適しています。このタイプなら、ツメを押しつけた時にはそのツメの厚み分だけツメが移動し、ツメの外側部分が基点となるので、正確に長さを測ることが可能になります。さらに、ツメを引っ掛けて測る際にはツメは外側に移動し、固定タイプと同様、ツメの内側が基点となります。移動ツメタイプならこのようにどちらのケースでも正確な測定が可能です。

5章:コンベックスの選び方

長さや幅だけでなく目盛りの種類も重要

コンベックスを選ぶ際、まず重要なポイントは長さです。コンベックスのテープの長さには、1m、2m、3.5m、5m、5.5m、7.5m、10m等があります。一般の家庭で使用するなら2m~5mくらいあれば十分でしょう。これ以上の長さになると本体がかさ張るうえ、重くなるので扱いにくくなります。不必要に長いものを選ぶことはオススメできません。
次にテープの幅です。前述したようにテープの幅は伸張性能に比例します。代表的な「13mm」や「16mm」、「19mm」などが、バランスが良く、様々な用途に使いやすいのでオススメです。
そのほか、テープの目盛りの規格にもバリエーションがあります。一般的なのが私たちにも馴染みやすいメートル単位のものです。また、建築の現場などで用いられる尺という長さに対応した、1/33メートル刻み(1寸に相当します)の目盛りが併記されているものもあります。
さらに、ツーバイフォー工法やプレハブ工法に用いられる、455mmごとにピッチ(ヨンゴーピッチ)を刻んだコンベックスなどもあります。ちなみにインチ単位に関してですが、日本では計量法によってインチ規格のコンベックス販売が禁止されているので、基本的にお店にはありません。ネット通販などでは購入できるようですが、品質や精度に問題のあるものもありますので注意してください。
コンベックスの目盛りの種類は、多ければより多くの用途に使用できますが、その分情報が多くなりすぎるので、測り間違う可能性も増えます。尺やヨンゴーピッチなどの単位を使用する予定がないのであれば、メートル単位のもので十分でしょう。
さらに、表面だけでなく、裏面にも目盛りがあるタイプもあります。表裏に目盛りがあると、壁面や柱、天井などを測る際にも裏返す必要がなく便利に使えます。

6章:JIS規格

コンベックスの長さによる許容差とは

コンベックスにはJIS規格があります。幅は4mm~30mm、長さは0.5m~10mまでのものがJIS規格ではコンベックス(正確にはコンベックスルール)であると定められています。JIS1級規格を取得したコンベックスは精度に関して信頼がおけるので、選ぶ際にJIS規格品なのかどうかもしっかりチェックしておきましょう。
コンベックスのJIS規格では、テープの長さによる許容差を以下の通りに定めています。これはテープに張力を加えない状態で引き出し、その長さを標準器と比較した場合の許容差となります。

● JIS1級の長さと許容差(テープ目盛りのみ、ツメは含まず。ツメを含む場合はさらに±0.2mm)

長さ  /  許容差

0~1m / ±0.3mm
0~2m / ±0.4mm
0~3m / ±0.5mm
0~4m / ±0.6mm
0~5m / ±0.7mm
0~6m / ±0.8mm
0~7m / ±0.9mm
0~8m / ±1.0mm
0~9m / ±1.1mm
0~10m / ±1.2mm

まとめ
コンベックスはDIYや引越し、模様替えに必須となるだけではなく、もちろん建築や工事などのプロの現場でも欠かせないツールです。長さや厚さ、深さなどを目盛りで測る、というとてもシンプルなツールですが、その測定誤差が大きかったり使い勝手が悪かったりすれば、本来の目的を果たすことができません。肝心の精度や品質をしっかりとチェックして、目的や用途に合わせて自分の使いやすいものを選ぶようにしてください。