ヘッジトリマーの選び方

季節によって表情を変える自然の草花に囲まれた生活は日々の暮らしをとても豊かなものに変えてくれます。そして、そのような植物との触れ合いをかなえてくれるのがガーデニングや庭造りといった趣味でしょう。
自然と直接触れ合える上に、自らの手で花壇や庭木、生垣などを素敵にデザインする楽しさも味わえる奥深い趣味がガーデニングや庭造りです。その規模こそさまざまですが、たくさんの方が楽しまれているはずです。
しかし、そのようなガーデニングや庭造りは、とても楽しいものですが、規模が大きくなればそれだけ手入れの手間が大きな負担になることがあります。でも、自然のものである植物は手入れを怠り、定期的な剪定をサボってしまうと、あっという間に伸び放題となり悪夢のような姿に…。
さらに、一旦伸びてしまった庭木や生垣はさすがに剪定バサミを使って、1本1本枝を切るのは手間がかかりすぎます。そうなればさらに手入れをサボってしまうことになりかねません。どうしても面倒だという場合は、便利なヘッジトリマーを使って一気に剪定してしまうのはどうでしょう。
ヘッジトリマーは庭木や生垣、植え込みなどのお手入れにとても便利なアイテムです。うまく使えば選定作業の手間が大幅に省けます。またその仕上がりも美しいものになります。使い方には多少のコツが必要ですが、基本を守れば決して難しくありません。そんな生垣、庭木の剪定にオススメのヘッジトリマーについて、その選び方や使い方、手入れの方法などをご紹介します。


目次
1章:ヘッジトリマーとは
2章:ヘッジトリマーの用途
3章:ヘッジトリマーの選び方
4章:ヘッジトリマー使い方とポイント
5章:ヘッジトリマーのお手入れ方法
まとめ


1章:ヘッジトリマーとは

長く伸びたブレードで一気に刈り揃えることが可能

Hedge(ヘッジ)とは英語で生け垣、垣根のこと。そしてTrimmer(トリマー)は同じく英語で刈り揃える、切り揃える道具を指します。つまり、ヘッジトリマー(Hedge trimmer)とは、生垣などを刈り揃える道具ということです。
その形は、エンジンやモーターなどを内蔵した本体から、前方に細長く平らなブレードが伸び、そのブレードのサイド(両刃と片刃があります)に複数の刃を持っています。ちょうどノコギリザメやノコギリエイの長く伸びた鼻先のような形を想像してもらえると良いでしょう。そのブレードに内蔵された2枚の刃を往復運動させることで生け垣や植木を一気に刈り込みます。
いうなれば、庭木や植え込みなどにとってのバリカンのようなものです。そのため、ヘッジトリマーは植木バリカンや生け垣バリカンなどと呼ばれることもあるようです。
長いブレードを使い、一気に広い面積を刈ることができるため、剪定バサミなどを使うよりも、作業時間を大幅に短縮することが可能です。
動力には主にエンジンや電気モーターが使われており、電動式にはコードから電源を取るタイプと、バッテリーを使った充電式があります。動力を使用するので手作業に比べるとスピーディかつとても効率的に剪定ができ、手軽に美しく生垣などを刈り込むことが可能です。しかし、内蔵された刃が高速で動くため、使用する際には慎重さも求められます。
きちんと扱わないと、刈り込みすぎてしまったり、場合によっては思わぬケガの原因になることもありますが、一台あるとガーデニングや庭造りの手間を大幅に軽減してくれる便利なアイテムと言えるでしょう。

2章:ヘッジトリマーの用途

広い範囲にはヘッジトリマー、細部には剪定バサミを使う

主に生垣や庭木、植え込みなど植物を広範囲に剪定する際に活躍してくれるのがヘッジトリマーです。不要な枝を切り落として、生垣や植え込みなどを好きな形に整えるのが目的のものなので、芝刈り機などとは違い、基本的に芝生などを刈る作業には向いていません。
ただし、販売されている商品によっては芝刈りにも対応したヘッジトリマーというのもあるので、より幅広い用途に使用したいという場合は、そういった製品を選ぶ必要があります。
ヘッジトリマーの大きな特長は、手の届きにくい場所でも剪定できること。さらに生垣や植え込みなどといった、広範囲に刈り込む必要がある植物を一気に剪定できるということです。これは剪定バサミだけでは困難です。
また作業性に優れている上、好きな形に整えるのも比較的容易です。刈り込み面を均一に整えるなどといったことも慣れれば難しくありません。ただし太い枝の切断や、部分的な細かな仕上げなどには向いていませんので、広範囲の刈り込みにはヘッジトリマー、細部を整えるには剪定バサミというように使い分けるのがベストでしょう。
ヘッジトリマーの購入にはそれなりの金額がかかりますが、業者に生け垣や庭木の形を整えてもらうには相応の費用がかかりかつ定期的にお願いしなくてはなりません。しかしヘッジトリマーを手に入れておけば、作業費用をかけず何度でも自分で行うことが可能です。
植え込み、庭木などのあるお庭をお持ちであり、なおかつそのスペースが手作業で剪定するには広すぎるという場合は、ヘッジトリマーを一つ持っておけば大いに役立ってくれるはずです。

3章:ヘッジトリマーの選び方

作業する範囲や体力も考えた上で選択する

ヘッジトリマーの動力には、エンジンと電気モーターがあります。また電気モータータイプにもコード式と、充電式があり、それぞれにはメリットデメリットがあります。選ぶ上でまずその特長を把握しておくべきでしょう。気になる特長は以下の通りです。

① エンジン式ヘッジトリマー
エンジン式の一番の特長は、電動式よりもパワーがあるので、太い枝があっても一気に切断することができるということ。またコードが必要ないので使用する場所を選ばないというのもメリットでしょう。しかし、エンジン自体がとても重いので電動式のヘッジトリマーに比べるとどうしても重量が重くなります。
また、騒音がするというのも気になるポイントです。住宅密集地では安易に使うのがはばかられるかもしれません。また振動も大きく、燃料などの準備も必要です。定期的なメンテナンスも欠かせません。
② 電動コード式ヘッジトリマー
コードタイプのヘッジトリマーは比較的軽く、振動も少なめ。さらに騒音もエンジン式に比べれば静かです。そのため力のない女性や高齢者でも扱いは難しくありません。
しかし、エンジン式ほどのパワーはないため、太い枝などの剪定には向いていません。また電源が取れない場所では延長コードなどがないと使用できない上、コードの取り回しが面倒、かつ、不注意で電源コードを切断してしまう可能性もあるという欠点があります。
③ 充電式ヘッジトリマー
充電式ヘッジトリマーは、軽く騒音や振動も小さめで扱いやすいという点はコード式と同じです。コード式にないメリットは、コードがないので電源がない場所でも使えるということ。また、コードの取り回しの面倒がなくコード切断のリスクがないということでしょう。
しかし、パワーがエンジン式よりも小さいという欠点はコード式と同じです。また充電地は長時間の使用には向いておらず広範囲の生垣などの剪定の場合は、予備の充電地の用意と交換が必要となります。さらに軽いとはいっても、充電池が必要なためコード式よりは重くなります。手軽さでは一番ですが、使用する環境を選ぶかもしれません。

ヘッジトリマーにはタイプによってそれぞれこういった特長があります。この中でもやはりエンジン式はパワフルで作業性が高いというのが大きな魅力です。広範囲の作業を予定されている場合、つい選びたくなりますが、エンジンがある分どうしても重くなってしまいます。
長時間作業となるとその重さを支え続けなくてはなりません。可能であれば一度ホームセンターの売り場などでその重さを試してみてください。
自分の体力で十分作業できそうだと思えたら問題ありませんが、長時間作業をすることを想定して、この重さでは辛そうだな、と感じた場合はコード式や充電式の電動タイプをオススメします。

刈り込み幅

ヘッジトリマーを選ぶ上でのもう1つの重要なポイントが刈り込み幅です。刈り込み幅とは、ヘッジトリマーのブレード部分の長さのことです。このブレードのサイドに刃がついているので、長ければそれだけ一度の刈り込める幅が広くなるということになります。
刈り込み幅には細かいスペースの剪定に向いた200mm~300mmほどのものから、標準的な350mmほどのもの。そして広いスペースの選定に適した370mm~460mm や、さらに大型の500mmほどのものまでさまざまなものが揃っています。
標準的な350mm前後のものなら、取り回しも楽で扱いやすく幅広い用途に使用できます。また細かい作業にも便利です。植木などを丸い形に刈り込みたいという場合には刈り込み幅が小さい方が使いやすいでしょう。
それよりも大型の370mm~460mmのものは広い範囲を一気に刈り込むことができる本格派です。広いお庭をお持ちの方には向いているかもしれません。ただし大きくなるほど細かな作業に向かなくなるので別のヘッジトリマーと合わせて使い分ける必要があるかもしれません。
470mm以上となる大型のものは街路樹の剪定などまで対応できますが、その分重く、扱いが大変です。慣れていないと使いこなすのは難しいかもしれません。一気に刈り取ってスピーディに作業を済ませたいからと、安易に刈り取り幅の広いものを選ぶのではなく、実際に使用する環境や自分の体力に合わせて適したものを選ぶようにしましょう。

4章:ヘッジトリマー使い方とポイント

1mにつき3~4秒をかけゆっくり刈り進む

生垣や庭木の刈り込みをする際、ヘッジトリマーと合わせて他にも以下のようなものを用意しておくと作業がスムーズに行えます。

1 .

刈込バサミ/剪定用のハサミです。ヘッジトリマーでは刈り取れない太い枝をカットする際に使用します。

2 .

芽切バサミ/小枝など小さな部分の剪定に向いているのが芽切バサミです。細かな部分の剪定、仕上げに使用します。

3 .

ガーデンクリーナーや竹ぼうき/ガーデンクリーナーは園芸用のほうきです。刈り取った枝葉を集めるため使います。

4.

収草袋や角型袋/刈り取った枝葉をまとめ、収納する袋です。

5 .

刃に注油するための油

こういったアイテムも合わせて揃えておくと良いでしょう。刈り取る作業だけでなく、刈り取ったあとの片付けのことも考えて作業をはじめましょう。

また、ヘッジトリマーを使用する際には服装などのしっかりとした準備と、十分な注意が必要です。まず服装はヘッジトリマーの刃に巻き込まれないような、動きやすい作業着を着るのが良いでしょう。作業着がない場合は、夏でも長袖、長ズボンを着用することをオススメします。
さらに目の保護のためにゴーグルも着用し、手を守る軍手などグローブも着けてください。
服装の準備ができたら、次にヘッジトリマーの刃に油を注します。また、いきなりヘッジトリマーを使うのではなく、まずはそのヘッジトリマーが切断可能な最大径(説明書などに記載されています)よりも太い枝は剪定バサミなどで先にカットしておきましょう。スムーズに作業を進められます。
生垣などの高さをきれいに揃えたい場合は、作業前にロープなどを水平に張って、揃える高さの目印にしておくと良いでしょう。
まずは上部の剪定方法です。進行方向の刃先を少し下げて、角度をつけながら刈っていきます。ブレードを水平に進行方向へゆっくりと動かしてください。その際、1m刈り込むのに3~4秒ほどかけるくらいにゆっくりとした速度で進むようにしてください。
張っておいたロープを目印にしてその高さに沿うように動かすときれいに水平に仕上げることが可能です。
次に側面の刈り込み方です。地面に対して垂直に刈りみたい場合は、上から下ではなく下から上方向に刈り進んでいきます。その際、刃から体をできるだけ離し、ヘッジトリマー本体を垂直に保ちながら、ゆっくりと刈り進んでいきましょう。ツゲやツツジなどを玉造りしたい場合は、 根元の方から玉の頂上に向かって刈り込むときれいに仕上がります。作業中は切れ味を保つため、1時間に一度を目安に刃に油を注してください。
万が一刃が金属などを巻き込んだ場合は、すぐにスイッチを切って作業を中断してください。異物を取り除いてから作業を再開します。

刈り込み作業が終了したら、竹ぼうきやガーデンクリーナーを使って剪定した枝葉を集めます。集めた枝葉は収草袋などにまとめ、お住まいの自治体のルールに従って処分してください。これで刈り込み作業は完了です。

5章:ヘッジトリマーのお手入れ方法

切り口がきれいでなくなったら刃の交換タイミング

ヘッジトリマーは使用後、樹液などが付着したままになっていると刃が劣化する原因になるので、クリーナーなどを使ってキレイに拭き取ってから片付けましょう。
また、ヘッジトリマーは刃物ですので電動工具などと同様に定期的なメンテナンスも必要です。最も重要な刃の切れ味は、使用に伴い徐々に落ちてきてしまいます。まずは製品などに付属している取り扱い説明書を参照しましょう。
基本は、汚れを落とし定期的に潤滑油や防錆剤を塗ることです。お手入れの手順は、まずケガをしないように手袋をしてから、ワイヤーブラシなどで刃の両面の汚れを落とします。その汚れを布で拭き取ってから油を十分に注してください。使用する油は粘度の低い2サイクルオイルや4サイクルオイル、マシン油、スプレー式の潤滑油などが向いています。
欠かさずにメンテナンスを行うことで切れ味が長持ちします。また長時間の作業の際にも、1時間に一度ほど油を注すようにすると切れ味が長持ちします。
しかし定期的なメンテナンスをしていても刃はどうしても徐々になまってきてしまいます。剪定作業をしたあとの枝の切り口を見て、新品のときと比べて、切り口が潰れていたり、きれいでなかったり、枝の繊維が残るようになった、などが気になるようになったら刃が寿命に近いかもしれません。
もし、刃のクリーニングをして、油を注しても刃の切れ味が戻らないようなら、刃の交換をオススメします。
ただし、ヘッジトリマーの刃の交換は、工具なども必要ですし、慣れていない方には難しいかもしれません。自信がないようでしたら別途交換工賃などがかかりますが、メーカーに交換を依頼するか、購入したホームセンターなどに相談するのが良いでしょう。

まとめ
生垣や庭木の剪定作業を大幅に効率化できる、便利なヘッジトリマーは、一度使用すると、その便利さに誰もが手放せなくなるはずです。
こちらでご紹介したものにはエンジン式、電動式などがありそれぞれにメリット・デメリットがあります。一般的なご家庭の庭のお手入れであれば、本体が軽く取り扱いも簡単な電動タイプが向いているかもしれません。
いずれにしても機能的にはシンプルなので、特に使い方に難しいことはありません。ただし、ヘッジトリマーは動力を搭載した刃物ですので、扱いを間違えると危険なものでもあります。使用の際にはくれぐれも安全に気を配ってください。
ご紹介したポイントを参考に、剪定したい生垣や庭木、植え込みの規模や作業範囲を見極め、なおかつ扱いやすさや予算なども考慮して、あなたに向いたヘッジトリマーをぜひ見つけてみてください。