蝶番の種類と使い分けのポイントは? 取りつける際の注意点

玄関のドアやキッチンの棚、オーディオラックのガラス扉に、クルマのドアなど、およそドアや扉と呼ばれるものの多くに使われているのが蝶番(ちょうつがい)です。この蝶番があるからこそ、扉やドアは簡単に外れることなく、安全かつスムーズに開閉できるのです。
でも、蝶番といってもその種類は様々で、デザインや機能、素材の違いなども幅広く、ホームセンターの蝶番売り場に行ってみても、いったいどれが何のための蝶番なのか判断するのは簡単ではありません。
そのため、DIYなどでいざ使おうとすると、いったいどれを選べば良いのか迷ってしまいがちです。そもそも蝶番は見た目にはわずかな違いでも、実は目的が違うものなども少なくありません。正しく使用するには蝶番の違いを知っておく必要があるのです。そこで、そんな蝶番について、いったいどのような種類があるのか、取りつける上での注意点はなんなのかなど、正しく使用する上で役立つ情報を詳しくお届けします。


目次
1章:蝶番とは?
2章:蝶番が使用されているシーン
3章:蝶番の種類
4章:蝶番の取りつけ方
5章:取りつけの際の注意点
まとめ


1章:蝶番とは?

まるで羽を広げた蝶のようだから蝶番

扉や家具、箱形のケースなど身近なところで数多く使われている蝶番ですが、その呼び方は他にも、丁番(ちょうばん)やヒンジなどがあります。一般には蝶番という呼び名がなじみ深いですが、建築業界などでは丁番という呼び方の方が浸透しています。
そもそもは開き戸や箱の蓋をスムーズに開閉できるようにするための金具のことで、基本は2枚の金属板を1本の回転軸で繋ぎ、その軸を中心に金属板が左右に開くという仕組みになっています。
そして、この金属板を開いた形が、羽(翅)を広げた昆虫の蝶に似ていることから、蝶番と呼ばれるようになったと言われています。

2章:蝶番が使用されているシーン

あらゆる扉や蓋に使われている

ドアとドアの枠、箱とその蓋、棚本体と扉などを繋ぎ、スムーズな開閉動作を支えてくれるのが蝶番です。この蝶番がなければドアも棚もその機能を果たすことができません。例えば蝶番のない玄関ドアを想像してみてください。出かけるとき、また帰宅の際、いちいち重い扉を持ち上げ、面倒でも、端にどかしてから自宅に出入りしなくてはなりません。これでは不便でなりませんね。
でも重いドアを支え、スムーズな開閉をかなえてくれる蝶番があれば、そんな苦労はありません。普段当たり前のようにドアを開け閉めしていますが、それを支えているのが小さな蝶番なのです。
また、身近なところで使われている蝶番は玄関ドアだけではありません。部屋の扉にシューズボックスの扉、さらに天窓やクローゼットの扉もそうですね。家具だけでなくトイレの便座、ピアノの鍵盤の蓋、冷蔵庫に電子レンジ、ノートパソコンや仏壇にだって使われています。このように様々な所で蝶番は活躍し、私たちの暮らしを支えてくれているのです。

3章:蝶番の種類

大きさ、特長、素材などその種類は多岐にわたる

2枚の金属板である羽根(羽、旗などとも呼ばれる)を、ピンなど1本の軸で繋ぎ、それぞれの羽根を、ネジやボルトで扉と棚などの本体と繋ぐというシンプルな構造を持つ蝶番。羽根に繋がれた扉やドアが軸を中心に回転するという仕組みは変わりませんが、その種類は意外なほどたくさんのものがあります。
そこで代表的な蝶番についてその違いや特長などをご紹介します。

● 平蝶番
様々なシーンに使われている最も基本となるタイプです。蝶番と言うときは、多くの場合、この最もオーソドックスな平蝶番のことを指します。
● 長蝶番
平蝶番にくらべると長いのがこの長蝶番です。ドアなど縦に長い物を設置する際に確実に支え、たわみや反り返りを防ぐことができます。ピアノの鍵盤の蓋やライティングデスクなど、長さのある扉などに用いられるので、ピアノ丁番ともいわれます。
● 旗蝶番
羽根部分が、扉側と取りつけ側で上下に分かれている蝶番です。その構造から、軸を中心にそれぞれの羽根が360度回転できるのが特長です。重量のある扉や、門扉が大きく回転する必要のある場所に使用されています。
● スプリング蝶番(バネ蝶番)
軸部分にバネが内蔵されており、扉などに対して元に戻る(閉まる)力が働く蝶番です。手を離すと自動的に扉が閉まってくれるのでカウンターなどの扉に向いています。片開きタイプと両開きタイプがあります。
● 自由蝶番
スプリング蝶番のように内側にバネが入っており、常に閉じる力が働きます。スプリング蝶番とは違い、扉に取りつけた後にバネの強弱の微調整も可能です。内側、外側どちらにも開くことのできる両開きの自由蝶番などもありバーカウンターなどに使用されています。
● アングル蝶番
アングル蝶番は家具やキッチン扉によく使われており、扉を閉じたときに外側から蝶番の取りつけ部分が見えないのが特長です。片開き用と両開き用があり扉を大きく開くことも可能です。
● スライド蝶番
家具やキッチンの扉などに多く使用されている蝶番です。アングル蝶番と違い、軸が多軸になっているため、特殊な軌跡を描き、扉が棚などの枠からはみ出すことなく開閉可能です。そのためキッチンカウンターのように扉が連続して取りつけられている場所でも、隣の扉に干渉することなく開閉することが可能です。棚の内側に取りつけることができるので蝶番が外から見えず見た目にもきれいです。
● トルクヒンジ
開閉時に一定のトルク(抵抗)が発生し、自由な角度に保持することのできる蝶番です。監視カメラやモニターなど角度を調整し固定しておきたい場合に使用します。また扉などが不用意に閉まることを防ぐことも可能です。
● オートヒンジ
扉の開閉スピードを制御する機能を兼ね備えた蝶番です。プレートが上下に分かれており、ダンパーヒンジとスプリングヒンジという2種類の蝶番で構成され、開閉スピードをコントロールします。
● 儀星蝶番
扉を90度の角度に開いた際に、軸部分の上下についている儀星と呼ばれる部分から、軸を引き抜くことができる蝶番です。シンプルで耐久性もあり重量のある玄関や室内の扉などに向いており、分解できるため扉などの取りつけも容易です。
● キャビネット蝶番
キャビネットやサイドボードなどに使われる蝶番です。扉部分と取りつけ方によって形状が変わり、インセットタイプやかぶせタイプなどがあります。
● 隠し蝶番
蝶番が、扉を閉めたときに見えなくなり、スッキリと見せることが可能です。デザイン性を重視する扉などに使われています。
● ガラス蝶番
ガラス扉やアクリル扉のための専用の蝶番です。ガラスやアクリル板を挟み込むように設置するタイプと、穴をあけて設置するタイプがあります。
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4章:蝶番の取りつけ方

スライド蝶番はカップサイズとかぶせを確認

構造が単純で、作りも頑丈なので、破損や故障はあまり多くない蝶番ですが、一旦壊れてしまうと交換するのは意外に面倒です。特にシステムキッチンの収納扉など、開閉回数が多く、構造も比較的複雑なスライド蝶番が使われているものの場合は、蝶番のサイズを選ぶだけでなくかぶせのタイプ(後述)なども正しく選ばないといけないので大変です。
そんなスライドヒンジの交換方法について、その手順をご紹介します。

① 壊れた蝶番のカップサイズを測る
まずは、もともとついていたスライド蝶番のカップサイズを測ります。カップとはスライド丁番の扉に埋まるカップ状の金属部分で、40㎜、35㎜、26㎜の3つのサイズがあります。また穴のないタイプもあります。

丸の部分がカップ。この直径を測る
② かぶせのタイプを調べる
次にかぶせのタイプを選びます。かぶせのタイプは棚などに対して扉がどのように取りつけられるかで変わってきます。扉が棚の前面を全て覆っているか(全かぶせ)、半分だけ覆い棚本体の板が少し見えているか(半かぶせ)、棚の中に扉が完全に収まっているか(インセット)で使用するスライド蝶番のタイプが変わるので注意してください。分からない場合は取り外した古いスライド蝶番を持ってホームセンターなどで聞くと良いでしょう。

左から、半かぶせ、インセット、全かぶせ
③ キャッチつきかキャッチなしか
次スライド蝶番にはキャッチつきタイプとキャッチなしタイプがあります。キャッチつきとは扉を閉める際に直前から自動的に閉める力が働くタイプです。開く際にも抵抗があります。キャッチなしは抵抗なく開閉できますが扉を固定しておくために別のマグネット式キャッチやローラー式キャッチが必要です。
④ 座金とカップを取りつける
適合するスライド蝶番が入手できたら取りつけです。まずは説明書きを読み、棚に取りつけるベース部分と、扉側につくカップ部分を分離します。そしてベースを棚側に、カップ部分を扉に別々に取りつけます。扉にはカップが埋まる凹みがあるはずです。
⑤ 座金とカップを合体させる
棚側に取りつけたベース部分に扉側のカップ部分に繋がった蝶番をかぶせるようにして組み合わせ、カチっと音がするまで押し込んでください。扉の上下とも同じように合体させます。きちんと装着されているか2~3度扉を開閉して確かめてください。
⑥ 微調整する
扉を閉じてみて傾きや隙間がある場合は微調整します。調整方法は製品によって違いますが、多くの場合蝶番の真ん中にある固定ネジと調整ネジで調整が可能なはずです。詳しくは説明書きを読んでください。スムーズに開閉でき傾きや隙間がなければこれで完成です。

5章:取りつけの際の注意点

壊れたスライド蝶番は必ずセットで交換する

スライド蝶番の交換方法を紹介しましたが、作業の際に注意するべきことがいくつかあります。まず、スライド蝶番を交換する際には、その扉の1ヶ所だけが壊れたというときにも、交換は必ずセットで行うことです。
なぜなら種類の違う蝶番を1つの扉に同時につけてしまうと、バランスが崩れて不具合が生じることがあるからです。必ずその扉についていた全ての蝶番を一度に交換するようにしてください。
そして取りつけの際にはベース部分の向きを必ず確認すること。一旦分解してしまうと間違いやすいので注意してください。またベースは後で微調整できるようにいきなり完全に固定するのではなく、ある程度遊びを持たせ微妙に移動できるよう仮止めしておくのもポイントです。
さらに、微調整の際には電動ドライバーやインパクトドライバーは使用せず、必ず手回しドライバーを使ってください。調整用のネジは微妙な締めによって調整するものです。電動ドライバーなどではネジに過大なトルクが加わってしまい、ネジ山が破損して蝶番の機能を損なってしまうことがあります。くれぐれもやめましょう。

まとめ
蝶番についての基本と、スライド蝶番の交換方法などをご紹介しました。紹介したスライド蝶番は家具の扉やキッチンの棚などに多く使われており、使用頻度が高い分不具合が起きやすい蝶番です。もし故障している場合は紹介した方法で交換を試してみてください。
ただし、スライド蝶番はもともと微調整ができる機能を持っています。もしかしたら故障ではなく使用に伴いその調整用のネジが少し緩んでバランスが崩れているだけかもしれません。交換をする前にまずはその調整用ネジを使って不具合が直らないか試してみると良いでしょう。

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