ベランダでも簡単に育てられる
玉ねぎのプランター栽培

玉ねぎは、収穫後に長期間保存でき、和洋中とさまざまな料理に使えるため、食材として重宝する野菜です。11月から5、6月にかけてと栽培期間が長いわりに手がかからないこともあって、ホームセンターなどでは販売を始めるとすぐに苗が売り切れてしまうほど人気があります。
たくさん収穫するためには畑で栽培しなければなりませんが、ベランダに置いたプランターでも栽培と収穫を楽しむことができます。初心者でも簡単なプランター栽培の方法を紹介するので、初めての玉ねぎ栽培をぜひ楽しんでください。

1.玉ねぎの種類と栽培時期

玉ねぎは、苗、種、種球(球根)から育てる方法があり、家庭菜園では苗から育てるのが簡単で一般的です。苗から育てる場合は、11月ごろに植え付けて翌年の5~6月に収穫します。

玉ねぎの種類は、収穫時期によって「早生(わせ)」「中生(なかて)」「中晩生(なかおくて)」「晩生(おくて)」などにわけることができます。品種によって味や保存性が変わってくるので、お住まいの地域の気候や品種ごとの特徴を比べて選びましょう。

  • ※ここで紹介する栽培時期は、中間暖地を対象にしています。お住まいの地域の気候によって、植え付けの適期は前後するので注意してください。

早生種の特徴

10月下旬~11月上旬に植え付けて、3月~4月に収穫します。生食もできて、やわらかくて甘いのが特徴です。通常、玉ねぎは乾燥させてから保存しますが、この種類のものは「新玉ねぎ」として生のまま食べるのに適しています。
栽培期間が短めなので、野菜栽培の初心者や早めに収穫して夏野菜の栽培のためにプランターをあけたい方などにおすすめです。
ただし、水分量が多いため、長期間の保存には向いていません。

中生種の特徴

11月上旬~下旬に苗を植え付けて4月中旬~5月に収穫します。早生種と晩生種の中間の性質を持ち、生でサラダなどでも食べられて、ある程度の期間は保存もできる種類です。

中晩生種、晩生種の特徴

11月~12月上旬に苗を植え付けて、5月中旬~6月に収穫するタイプです。中晩生種は育てやすくて大玉に育つものや長期保存が可能な定番の品種が多くあり、たくさん作るのに適した種類です。食味は加熱すると甘みが増す品種が多い傾向があります。晩生種はもっとも長期保存に向いている種類で、保存状態が良好なら最大で1年の保存が可能です。

2.玉ねぎ苗の選び方

玉ねぎ苗は、植え付けの時期が近づいた10月下旬ごろからホームセンターや園芸店で販売されます。中生種や中晩生種のように植え付けるにはまだ早い種類もこの時期に並び始めますが、玉ねぎ苗は人気があるので早めでも売り切れるまえに入手しておくのがよいでしょう。

玉ねぎ苗は、通常は50本程度や100本程度の束で販売されていて、1本1本を選ぶことはできません。店頭では、葉や茎の傷んでいる苗が少ない束、太すぎる苗が多く入っていない束を選ぶようにしましょう。プランター栽培の場合、たいていはすべての苗を使うことができないので、束のなかからよい苗を選別して植え付けます。

苗を選別する際は、根が白色で球から茎にかけての部分に傷みがないもので、茎の太さが5mm程度であるのを目安に選ぶとよいでしょう。あまり厳密に選定する必要はありませんが、太すぎるとトウ立ち(成長して花芽をつけること)しやすくなるため避けるほうが無難です。

3.玉ねぎ栽培のポイント

玉ねぎは病害虫の被害が少なく育てやすい野菜ですが、美味しいものを収穫するためには植え付けるタイミングがとても大切です。

玉ねぎは11月ごろに植え付けて冬越しさせると、自然状態では5月に花が咲き、6月に種ができます。このように花芽がついて花が咲くことをトウ立ちと呼びますが、球部分の収穫が目的の場合は花を咲かせるのは失敗となります。なぜなら、玉ねぎがトウ立ちすると栄養が花芽に向かうために球の生育が悪くなるうえ、球の内部に硬い部分ができて食味も悪くなってしまうからです。

玉ねぎは植え付けが適期より早すぎると、早く成長しすぎてトウ立ちしやすくなります。美味しい玉ねぎを収穫するためには、購入した品種の適期を守って植え付けをするようにしましょう。

販売の都合などで苗の購入が早くなってしまった場合は、以下で紹介する方法を参考に、植え付けのタイミングまで苗を保存しましょう。

保存期間1週間

苗全体を水で軽く濡らした新聞紙でくるみ、根が乾かないように少量の水を入れたバケツなどに立てておきます。新聞紙が乾燥しないように注意すれば、1週間程度は保存できます。

保存期間2週間

根の部分だけが浸かる程度の深さに水を入れたバケツに立てて、水耕栽培の容量で保存。午前中だけ日光が当たる半日陰などに置いて、水切れに注意して管理します。その間は、水が腐らないように毎日交換しましょう。

保存期間1カ月

植え付けまで日数があるときは、仮植えをするのが確実です。方法は、苗を縛っているヒモをはずし、束のままでかまわないので立てた状態で空いているプランターなどに根の部分が埋まるように植えておきます。仮植え中は土が乾かない程度に少し控えめに水やりをして、半日陰で管理しましょう。

4.玉ねぎをプランターで栽培する方法

用意するもの

玉ねぎ苗

栽培時期や保存性、食味などを考慮して、作りたい品種の苗を購入します。玉ねぎは冬越し野菜として人気があるので、販売時期を問い合わせてホームセンターや園芸店、種苗店で購入しましょう。販売前に予約ができる場合もあります。

プランター

深さ20cm以上のもの。大きさの目安として、710型のプランターで10cm大の玉ねぎを8個、60型のプランターで8cm程度の中玉を8個程度作ることができます。

培養土、鉢底石

プランター栽培の場合は、市販されている野菜専用培養土を使うと手軽です。このタイプの培養土は、通気性・排水性・保水性が野菜栽培に適したバランスになるように配合されているうえ、植え付け時に必要な肥料を含んでいます。腐りを防ぐために排水性を高める鉢底石も用意しましょう。

マルチング材

根を冬の寒さから守るために土の表面を覆います。敷きワラや腐葉土を被せてもよいですが、風で飛ばされる心配があるベランダ栽培の場合には小粒のウッドチップがおすすめです。

スコップ、手袋

用土の投入に使うスコップ、手を保護するグローブを用意しましょう。

植え付け

プランターの底に、1~2cm程度の厚みになるように鉢底石を入れます。プランターは710型のものを使用。
プランターの縁から3cm程度の高さまで培養土を入れます。

ここでは10cm以上の玉ねぎを目指して植え付けるため、約15cm間隔で植え付けをします。写真のように収穫サイズに近い大きさものを使って土に印をつけると、植え付け場所がわかりやすいでしょう。

先ほどつけた丸い印の真ん中に、鉛筆や指で深さ5cm程度の穴をあけます。
穴に玉ねぎ苗を入れてやさしく土を押さえます。

茎の白い部分が少し見えるくらいまで苗を引き上げます。玉ねぎは植え方が深すぎると球が成長しにくくなります。葉の分岐部分が土の上に出るように植え付けましょう。
大玉を作る場合には、株間に余裕を設けてゆったりと植え付けます。
土の上にウッドチップなどのマルチング材を敷きます。

プランターの下から出てくるまで、たっぷり水を与えます。植えた直後の苗は根が浮きやすいため、細かいシャワー上の水流でプランターのなかがじゃぶじゃぶにならないように気をつけながら水やりをしましょう。

中玉を目指す場合の植え付け方

上記と同じ710型のプランターを使い、約8cmの大きさのフタで植え付け場所の印をつけています。株が密になりすぎないように、1列ごと互い違いになるように印をつけるとよいでしょう。

710型のプランターに15株を植え付けることができました。手ごろなサイズでたくさん収穫したい場合の植え付け方として参考にしてください。

余った苗の扱い

プランター栽培では、束で購入した苗を植え切れないことが多いでしょう。使っていないプランターがあれば、余った苗を密植してしまう方法があります。玉ねぎは大きく育ちませんが、小玉ねぎや葉玉ねぎとして収穫を楽しめるので試してみてはいかがでしょうか。

5.生育中の管理

水やりのポイント

玉ねぎは水の過不足に神経質になる必要のない野菜ですが、過湿の状態が続くと根腐れする恐れがあります。土の表面が乾き始めたらプランターの下から流れ出るまでたっぷりと水を与え、土が適度に湿った状態を保つようにしてください。

追肥のタイミング

玉ねぎは栽培期間の長い野菜なので、数回の追肥を行いましょう。タイミングの目安としては、休眠を終える2月下旬ごろに1回目、3月中旬ごろに2回目を与えます。

6.収穫

球が十分に大きくなって、葉が付け根からばっさり倒れたら収穫のタイミングです。葉が枯れるまで待ってから収穫すると球が腐りやすくなってしまうので、倒れた葉に緑色が残っているうちに収穫しましょう。

収穫する際は、葉の下の部分をしっかり持って上に向かって株ごと引っぱると玉ねぎを抜き取ることができます。

7.収穫後の保存方法

収穫した玉ねぎは、雨の当たらない風通しのよい場所で数日間乾燥させてください。その後、根を付け根のところで切り落とし、3~4株程度を葉の部分を束ねてしばってから吊るしておくとよいでしょう。吊るす場所がない場合は、葉を短くカットしてから通気性のよいカゴなどに入れて保管してください。
ただし、極早生種や早生種は長期保存ができないので、早めに食べ切るようにしましょう。

まとめ

玉ねぎは、栽培期間は長いものの育て方が簡単なので、家庭菜園初心者のプランターでの栽培にもおすすめです。育てるものが少ない冬から春にかけて、球の生育を観察しながら野菜づくりを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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