地震から身を守るために今できること
家具の転倒と通電火災への対策
このコンテンツでわかること
- 地震防災で最も優先すべきポイント
- 家具の転倒がケガの原因になる
- 器具を使った具体的な転倒防止対策
- 配置や収納方法の工夫で危険を減らす方法
- 通電火災を防ぐ電源遮断装置の設置方法
こんな方におすすめ
- 地震対策を何から始めればいいか分からない方
- 家具の転倒防止対策をまだしていない方
- 首都直下地震や南海トラフ地震への備えを考えている方
- 賃貸住宅でもできる対策を知りたい方
- 家族の安全を守るために今すぐできることを探している方
1. 地震防災のポイント
震災直後は、病院も重症者への対応で手一杯になり、骨折程度の怪我ではすぐに治療を受けられないと考えられます。突発的に発生する災害である地震は、台風や大雨のように予測に従って事前に避難することができないので、家にいて死なない、ケガをしないための対策の優先度が高くなります。
大きな地震が発生したときに瞬時に危険を回避する行動をとるのは難しいでしょう。備蓄を万全にして発生後の避難生活に備えることも大切ですが、同時に家の中のリスクを減らす対策を行っておくことが大切です。
2. 地震によるケガで最も多いのは家具の転倒によるもの
近年発生した地震でケガをした人の多くが、家具類の転倒などが原因だとされています。倒れてきた家具の下敷きになって大ケガをしたり、棚から落ちてきた物や家電がぶつかったり、割れて飛散した食器やガラスを踏んでしまったり、さまざまなケースが考えられますが、地震の際には家具が凶器になりえます。裏を返せば、家具の転倒防止対策をしておけば、ケガのリスクを減らすことができるということです。
気象庁が発表している『震度とゆれの状況』によると、震度5弱を超えると棚にある食器類や本が落ちることがあり、震度6弱を超えると固定していない家具の大半が移動し、倒れるものが多くなるとされています。震度6弱以上が広域に拡大するとされる、首都直下地震や南海トラフ地震を想定して対策をするのなら、家具類の転倒防止対策は地震防災では必須と言えるでしょう。
3. 家具類の転倒による危険を減らす2つの対策
地震防災で指摘されている「家の中にある危険」、家具類の転倒や落下を防ぐためには、平常時にできるかぎりの対策をしておかなければなりません。明日起きるかもしれない地震に備えるわけですから、対策は先延ばしにしないですぐにでも実行するのが望ましいでしょう。
家具類への対策は、器具や金具を使用する転倒・落下の防止、配置や収納方法の工夫という2段階にわけて考えるとより効果的です。ここでは、それぞれについて解説します。
器具を使用した対策
家具類の転倒防止対策としてさまざまな固定用器具が用意されています。家具の大きさや重さ、設置場所などに合わせて、これらを使い分けましょう。
転倒防止の器具には、完全に転倒を防げなかったとしても、家具が転倒するまでの時間を遅らせる効果があります。揺れを感じて家具から離れる時間を稼げるだけでケガのリスクを小さくできるので、リビングやキッチン、寝室などにある大型収納など、倒れた場合にリスクの高い家具から優先的に対策をしておきましょう。
L型金具
L型の金具を介して家具と壁をネジで固定するタイプで、もっとも転倒防止効果が高いとされています。この金具は上向き、下向きのどちらでも取り付けられますが、より固定強度が高い下向きに取り付けるのがおすすめです。
賃貸住宅などで壁に穴をあけられない場合には、ネジどめするのに比べて強度は下がりますが粘着剤を使用した壁固定用の器具を設置するとよいでしょう。
ベルト(チェーン)タイプ
ベルトやチェーンの両端についた金具を、家具と壁にネジどめして固定するタイプです。家具と壁が少し離れていてL型金具を使えない場合でも、転倒対策ができます。ベルトタイプには長さ調整が可能な商品も用意されています。
ネジどめするタイプの注意点はL型金具と同様。粘着金具を採用したネジどめ不要のタイプも選べます。
突っ張りタイプ
家具と天井の間をポールで突っ張って支え、家具の揺れや転倒を防ぐタイプです。家具と天井の間が広くなるほど揺れを抑える効果が小さくなるので、設置する場所を選びます。
突っ張りタイプを設置する家具は背の高い大型家具が多いでしょうから、ストッパータイプを併用して効果を高めることをおすすめします。
粘着マットタイプ
強力な粘着素材でできたマットやシートで、家具や家電の脚に貼って浮き上がりや移動を防ぎます。転倒や落下を防止するためには、突っ張りタイプやベルトタイプと併用するのが望ましいでしょう。
大きいサイズは家電や小型収納などの固定に、小さいサイズは置物などの落下防止に適しています。粘着マットは素材が劣化するので、一定期間ごとに状態の確認や交換が必要です。
ストッパータイプ
断面がクサビ状の三角になっていて、家具の前側の下に差し込んで設置するタイプです。家具を後傾させておくことで、揺れたときに前側に倒れにくくします。
単独で使用した場合の転倒防止効果は小さいので、突っ張りポールタイプなどの補助的に使いたい器具です。
扉の対策
家具が転倒しなくても、扉が開いて収納物が飛び出してケガにつながることが考えられます。高い戸棚から物が落ちれば頭や顔を直撃する危険があります。食器が飛び出せば、陶器やガラス器の破片が散乱して足のケガにつながるでしょう。
収納家具の扉には開き止めのストッパーを取り付け、ガラス面に飛散防止フィルムを貼るなどの対策をしておくことをおすすめします。
設置が簡単なのは両開きの扉に両面テープで貼り付けるだけのタイプです。扉を開くときには、下側のレバーを押すとロックが解除されてフックを持ち上げることができます。
頻繁に使う開き戸には、感震タイプのロックがおすすめです。地震の揺れを感知すると本体のフックが自動的にロックされて扉を開かなくし、揺れが収まるとロックが解除されて扉の開閉が可能になります。通常は扉のキャッチとして機能していて、開閉するたびに操作をする必要がありません。
配置や収納方法を工夫する対策
転倒防止器具を使用すると、未対策の状態に比べて家具が転倒する可能性を小さくできます。しかし、転倒を完全に止められるものではなく、揺れが大きかったり長く続いたりした場合には持ちこたえられないことがあります。少しでも家具が転倒しにくくなるように収納方法を工夫したり、転倒したときのリスクを小さくできるように配置を考えましょう。
家具への収納方法
地震が発生したときには、背の高い家具ほど揺れに反応して倒れやすくなります。家具に物を収納する場合は、重いものを下の方に入れて重心を低くし、倒れにくくしましょう。この収納方法では、高いところから重いものが落下するリスクを小さくすることもできます。
家具を安全に配置
万が一家具が倒れてしまっても、怪我などの被害が少なく、避難通路を塞がない配置にしましょう。
寝る場所や座る場所の近くにはできるだけ家具を置かないようにします。置く場合には倒れても危険度が低い背の低い家具にするか、倒れても直接人に当たらない向きで設置する工夫をしましょう。
また、倒れた家具が避難時の動線を遮らないようにするのも配置のポイントです。ドアの近くや廊下には家具を置かないようにしましょう。
4. 火災を防ぐ電源への対策
地震によって送電線や電力施設に被害があると、同じ電力網に接続されている一帯で停電が起きます。その後、復旧が進んで電気の供給が再開されたとき、燃えやすいものが電気ストーブなどに接触していて発生する火災を『通電火災』といい、地震に関連した家屋火災で原因の多くを占めています。
避難する前にブレーカーを落とせば通電火災を防げますが、避難しなければならない状況で冷静にブレーカーを落とすのは簡単ではありません。そこで通電火災を防ぐ現実的な方法として推奨されているのが、感震装置付きブレーカーや電源遮断装置の設置です。どちらも大きい揺れを感知すると自動的にブレーカーを落としてくれるので、避難する前に配電盤まで行って操作する必要がありません。
ブレーカー自体を感震装置付きのタイプに交換するには電気工事が必要で費用もかさみますが、簡易タイプの電源遮断装置は数千円と安価で自分で設置することができます。作動するのは大規模地震の発生時だけですが、通電火災による二次災害を防ぎたいという方にはとても有効な防災アイテムと言えます。
電源遮断装置の設置
配電盤の工事をしないで簡単に取りつけられる簡易タイプの電源遮断装置は、『通電火災防止装置』や『感震ブレーカー』などの名称で販売されています。
簡易タイプは、ブレーカーの近くにセットしておき、大きい揺れを感知すると装置が作動してブレーカーレバーを引き下げるしくみです。
球状のおもりを利用するタイプは、設定しておいた大きさの揺れが起きると、おもりが台座から落ちてレバーに連結されたヒモを引っ張ってブレーカーを落とします。とても単純なしくみで、故障や動作不良の心配はほとんどありません。
まとめ
固定していない家具は大きい地震が発生したときには転倒し、ケガの原因になることを頭に入れておきましょう。自分や家族の身を守るためには、家具類の配置の見直しや転倒防止器具の設置はまっさきに実行したい対策です。賃貸住宅で使える器具も各種が発売されているので、家の条件や家具に合うものを選んで取り付けることをおすすめします。
- 並べ替え:
-
- 表示方法:
-

























