インパクトドライバーのオススメ

ネジ締めのなかでもパワー系の作業を得意とする電動工具がインパクトドライバーです。ウッドデッキやウッドフェンス、大型家具などの製作シーンでは、フル稼働で作業をサポートしてくれる、なくてはならない工具です。用途が広くニーズが高いこともあって、メーカーはDIY向けからプロ向けまで、きめ細かく多くの機種をラインナップしています。ユーザーとしては嬉しくもあり、悩ましくもあるところです。
パワーが違えば、大きさや重さも違ってきますから、いざ買おうとしても単純に性能だけで比べられない難しさがあります。今の自分の用途に適した一台はどれなのか。チェックポイントを比べながら、長く使える機種を選びたいですね。

インパクトドライバーとは

電動工具の初心者にとっては、インパクトドライバーとほかの電動ドライバーではどこが違うのか、「インパクト」が何を意味しているのか、わからないことだらけだと思います。そんな状態では、そもそも自分の用途にインパクトドライバーが適しているのかも、判断できません。まずはインパクトドライバーがどんな工具なのか、簡単に説明しましょう。

◆ インパクトドライバーの特徴

インパクトドライバーは、ネジやボルトの締めつけ作業に使う電動ドライバーの一種です。建築のプロならまず持っていますし、DIYや日曜大工で2×4材のような厚い木材を使う場合には、すぐに揃えたい工具です。その特長は、ほかの締めつけ工具が回転力だけを使うのに対して、回転力+打撃(衝撃=インパクト)で締めつけができるところです。本体内にハンマーと呼ばれる打撃装置を内蔵していて、回転力での締めつけでは力が足りないときに、このハンマーが回転方向に連続して打撃を発生させて、強い力でネジを最後まで締め込んでくれます。

インパクトドライバーで長い木ネジを締めつけると、途中の負荷が大きくなったところで、それまでの「ギュイーン」という回転音が「ダダダッ」という打撃音に変わります。これがまさにハンマーが叩いている音です。瞬間的に大きな力を加える打撃は、回転で力を加え続けるのに比べて、ビットの先端がネジの頭から外れにくくなります。パワーがあるのに扱いやすく、単純なネジ締め作業であれば使う人の負担を軽くしてくれるメリットもあります。

◆ インパクトドライバーでできる作業

インパクトドライバーはもともと締めつけ作業用に作られており、ネジやボルトの締めつけに使うのが、最も適しています。とくに長いネジを何本も連続して締めるような場合には、作業する人のストレスをとても軽くしてくれます。また、作業に適したビット(先端工具)を使うことで、回転工具でできる多くの作業が行なえます。

インパクトドライバーには、対応したさまざまなビットが出ています。ドリルビットを取りつければ木材や金属、プラスチックなどへの穴あけができ、砥石やヤスリのビットを取りつければ切削や研磨が可能です。変わったところでは、大型容器に入った塗料や漆喰をかくはんできる、ペイントミキサーという特殊なビットもあります。プロでなければめったに使う機会はないでしょうが、DIYで大がかりなリフォームをするときなどに役立つかもしれません。

初心者向けインパクトドライバーの特長

◆ 最大締めつけ能力をチェック

回転工具が発生させる力は「トルク」と言い、インパクトドライバーの性能表示には「Nm(ニュートンメートル)」という単位で書かれています。この数字が大きいほど、太いネジや長いネジを締めつけたり、堅い木にネジを打ったりする能力が高くなります。とはいえ、「最大トルク 100Nm」と書かれていても、どれほどの締めつけ力なのかはピンときませんよね。トルクと一緒に「最大締めつけ能力」として「木ネジ100mmまで」や「小ねじM6」などの記載があるはずなので、こちらを参考に自分の用途に必要なパワーがある機種を選ぶようにしましょう。次の項目で説明していますが、バッテリータイプであれば電圧がパワーのおおよその目安になります。

◆ バッテリーをチェック

・ バッテリーの種類

電動工具に使われているバッテリーには、リチウムイオン、ニッケル水素、ニカドなどの種類があります。最も新しく高機能なのがリチウムイオンバッテリーで、主要機種はどんどんこちらに切り替わっています。リチウムイオン電池は、ほかの充電池に比べると軽く、自然放電しにくく、継ぎ足し充電ができるなどたくさんのメリットがあります。使いたいときに放電して電池切れになっている可能性が減る。パワーが弱くなったら、すぐにバッテリーを交換して充電しておける。ちょっとしたことのようですが、リチウムイオン電池の機種は、DIYレベルの使用でもぐんと扱いやすくなっています。同じメーカー、同じ電圧の工具同士で互換性があるものも多いので、これからほかのバッテリータイプの工具も揃えていくつもりなら、とくにリチウムイオンバッテリーを採用した機種がオススメです。

・ バッテリーの電圧

バッテリーの電圧はV(ボルト)で表示されます。インパクトドライバーでは、7.2V、10.8V、12V、14.4V、18Vなどがあり、一般的には電圧が大きいほうが大きなパワーを発生させられます。DIYであっても木工製作に広く使いたいのであれば10.8V以上のものを、ウッドデッキ作りのように厚い木材を何枚もネジどめする作業であれば14.4V以上のものを選んでおくと安心です。市販の家具の組み立てや棚つけなどにたまに使う程度なら、7.2Vなどでも不便はないでしょう。

◆ 取り回しやすさをチェック

バッテリータイプの場合、電圧が大きくなるのに比例してバッテリー自体が大きく、重くなります。どうしても作業する人への負担は増すので、力の弱い人や連続してネジ締め作業をしたい人は、パワーと取り回しやすさのバランスを考えて電圧を決めたいところです。プロであっても誰もがハイパワーの18Vを選ぶわけではなく、専門の作業内容に合わせて、より小さい機種を好んで使う場合も多いようです。はじめてインパクトドライバーを買う場合はなおさら、数字だけ見て決めるのではなく、店頭で実物を持ち比べてチェックしたいですね。

プロ向けインパクトドライバーの特長

◆ 高性能モーターの採用

プロ用と言われる機種とDIY向け機種の違いは、耐久性やメンテナンス性、機能性など、さまざまなところに見られます。まず、高機能の象徴とも言えるのが、回転工具の心臓部であるモーターです。現在の上位機種の多くが採用しているのが、ブラシレスモーターなるもの。これは消耗部品であるブラシを使わないため、従来のブラシモーターのように部品を交換する必要がなく、モーターそのものはほぼメンテナンスが不要になっています。小型、軽量でバッテリーの持ちが良いという点も、連続作業が多いプロにとっては大きなメリットになります。また、ブラシレスモーターを使った機種は、パワー制御やソフトスタートといった従来のインパクトドライバーにない機能を搭載できるようになっています。

◆ バッテリー容量

電圧のVと一緒に、バッテリー本体にAh(アンペアアワー)という単位で表示されているのが、バッテリーの容量です。容量は言葉そのまま、電気を入れておくバケツの大きさだと考えてください。容量が大きいほど多くの電気を溜めることができ、一度の充電でこなせる作業量は多くなります。プロ用インパクトドライバーの場合は、同じ機種でも組み合わせるバッテリーの容量を選べるものがあります。容量が大きいとバッテリーサイズが大きく、重くなるので、一日の作業の中でのインパクトドライバーの使用頻度などに合わせて選べるようになっています。

◆ 低騒音タイプ

通常のインパクトドライバーは、内蔵された金属ハンマーが打撃を加えて締めつけ力を高めていますが、ハンマーの代わりにオイルによる圧力を利用するソフトインパクトという特殊なタイプがあります。オイルユニットが発生させる打撃は、動作音がとても小さいため、インパクトドライバーを使いにくかった集合住宅の修繕やリフォームなどの多いプロに選ばれています。

◆ 小型・軽量タイプ

専門の作業内容によっては、取り回しやすい軽量な小型機種のほうがメリットが大きい場合もあり、マキタなどはプロ向けに小型・軽量を特長にした10.8Vシリーズをラインナップしています。変わったところでは、本体が細く、グリップ部分を変形できるスティックタイプ(ペンタイプ)のインパクトドライバーなどもあります。これらはいかにも職人向けという感じがしますね。

ドライバードリルとの違い

形状や用途が近く、よくインパクトドライバーとの比較対象にあがるのがドライバードリルです。2つとも基本的に同じ作業に使用できる電動工具なので、どちらを選べば良いか初心者はとくに迷うところ。実際、経験者にどちらがオススメかを聞いてみても、人によって答えは違っていたりします。それほど、2つの使い分け方に明確な線引きをするのは難しいです。ただ、それぞれに得意とする作業があるので、事前にそれを理解しておくことは必要でしょう。
最初の電動ドライバーとして、はたしてインパクトドライバーが最適なのか。ドライバードリルとしっかり比較検討してみましょう。

◆ ドライバードリルとは

通常、「電動ドライバー」と言われるのがドライバードリルのこと。ドライバーとドリルの機能を合わせ持った、最もベーシックな回転工具です。インパクトドライバーと構造的に異なるのは、こちらは回転力だけでネジなどの締めつけやドリルを使った穴あけを行うところです。最大の締めつけ力ではインパクトドライバーにおよばないものの、打撃によるブレが発生しないために、よりデリケートな作業ができます。

◆ トルクの調整

インパクトドライバーにはなく、ドライバードリルにだけついている機能に、トルクを調整できるクラッチ機構があります。木ネジの締めつけ作業では、使うネジの太さや長さ、木材の硬さや厚さによって、ネジの締めつけに必要なトルクは異なります。必要以上に大きいトルクをかけると、ネジ頭の溝を壊したり、ネジ頭が沈みすぎたり、木材が割れたりします。目立たないところなら笑ってすませることもできますが、きちんと仕上げたい木工作品などではこうした失敗はなくしたいものです。クラッチ機構は、設定した力に達するとビットの回転が止まり、締めつけすぎを防止できます。

機種によりますが、10段前後から20段前後までのドライバーモードとドリルモードでトルクの強さを調整でき、作業に最適な力の締めつけを設定できます。実際に使うときは、最初はトルクを弱めに設定してネジを締めてみて、弱ければ数字を上げて締め増すようにします。ちょうど良い設定を見つけたら、あとは同じトルクで連続して作業ができます。

段数が多いほうが繊細に調整できますが、DIYなどの木工に使うのであれば10段以下で十分です。トルクの調整ができないインパクトドライバーでは、経験と勘でネジの締めつけ具合を調整しなければなりません。

◆ ビットの固定方法

インパクトドライバーは、先端にビットを固定するためにスリーブという機構を採用しています。スリーブは六角軸のビットを取りつけるための固定装置で、先端を引き出すだけでロックが解除されて、スピーディにビットの着脱ができます。丸軸は固定できないので、ビットを購入するときはインパクトドライバー対応などと書かれた六角軸のものを選ぶ必要があります。

もう一方のドライバードリルは、キーレスチャックという機構でビットを固定します。首の部分にあるチャックを回すと先端の3本のツメが開閉し、ビットを着脱します。ツメでしっかりつかむので、丸軸と六角軸の両方のビットを取りつけることができます。

◆ それぞれのメリット、デメリット

・ インパクトドライバーのメリット

ドライバードリルに比べて高トルクで締めつけるため、厚い木材を長いネジで組みつけるような作業には、インパクトドライバーが圧倒的に有利です。DIYでもウッドデッキや大型家具に使われる2×4材は、厚さが38mmあり、長さ90mmの木ネジ(コーススレッド)を使います。ストレスなく効率良く作業するには、インパクトドライバーの一択です。

・ インパクトドライバーのデメリット

トルクの細かい調整ができないため、柔らかい素材や薄い素材、木材の端部などにネジを打つと力加減が難しく破損させる場合があります。インパクトドライバーに対応した六角軸のドリルビットを使うと穴あけもできますが、作業途中で強い負荷がかかると打撃が加わってしまうため、ドリルの刃を傷める可能性があります。下穴用の小さい穴あけ程度なら問題は起きにくいですが、大きい穴あけは初心者にはあまりオススメしません。また、作業時に大きな打撃音が出るので、集合住宅などでの作業には向きません。

・ ドライバードリルのメリット

ドライバードリルの魅力は、なんといってもクラッチ機構によって細かくトルク調整ができるところです。薄い木材や細い木ネジを使う際にも適した強さに加減ができ、インパクトドライバーに比べるととても扱いやすいと言えます。クラッチ機構にはドリル専用モードがあり、大きな穴あけも強い回転力でスムーズに行えます。小物や小型家具の製作がメインであれば、ドライバードリル1本で不便を感じることはないでしょう。厚さ19mmの1×4材であれば下穴をあけずにネジを締め付けできるトルクは備えていますし、それより厚い木材でも、本数が少なければ下穴をあけてネジ締めできます。

・ ドライバードリルのデメリット

インパクトドライバーと比べるとトルクが小さく、長いネジを使う作業には向いていません。ドライバードリルでも下穴をあければ締め付けできないこともありませんが、何本も締めつけるには手間と時間がかかり非効率的です。

バッテリー式とコード式の特長

◆ バッテリー式

どの電動工具メーカーも、現在のインパクトドライバーの主力は、充電式やコードレスと呼ばれるバッテリー式になっています。コードで動きが制約されないため取り回しがよく、コード式に比べて作業性が優れています。とくに屋外でのウッドデッキやフェンスの製作、補修、室内のリフォームのように移動しながら行う作業ではとても便利ですし、コードを引っかけることがなく安全でもあります。作業台の上のような決まった場所で作業する場合は、コードレスであるメリットは小さくなりますが、いちいちコードを気にしなくて良いのは楽に感じます。

もちろん、作業するためにはバッテリーの充電が必要です。前回の使用から間隔があいていると、電池切れや充電不足で満足に作業できないことがあります。久しぶりに使う場合は、作業を始める30分以上前にバッテリーを充電器にセットしておき、すぐに作業を開始できるようにしておく手間がかかります。

連続してネジ締めをする作業を想定しているのなら、できれば予備のバッテリーを用意しましょう。バッテリーが2個付属するセット商品を購入することをオススメします。

◆ コード式

コード式(AC電源式)は、しばらくしまいっぱなしにした後でも、バッテリー式のように放電することがありませんから、コンセントがあれば使いたいときにすぐに作業できます。作業の途中でパワーが低下したり、電池切れを起こすことがなく、常に安定したパワーを持続してくれます。長時間使用しても、バッテリーを交換したり、充電したりする手間がかからないのは言うまでもありません。
価格はバッテリー式より安価ですし、後々劣化したバッテリーを買い換えることもないので、コストパフォーマンスでは有利です。バッテリー式に比べて取り回しは劣りますが、それほど使用頻度が高くなく、DIYの用途で室内専用と考えれば、コード式も選択肢に入れて良いでしょう。

本体の電源コードはせいぜい2m程度なので、作業する場所によっては延長コードが必要です。移動する範囲が広いと、コードの取り回しに注意したり、途中で違う場所のコンセントに差し替えながら使うことになります。こうしたことが多くあると、ストレスを感じるかもしれません。

インパクトドライバーの使い方

◆ ビットを取りつける

作業に合わせて使用するビットが決まったら、インパクトドライバー先端のスリーブを引っ張ってロックを解除し、そのままビットを差し込みます。手を離してスリーブを戻すとビットはロックされます。ビットを引っ張って、しっかり固定されていることを確認してから作業しましょう。

◆ スイッチ操作

ハンドルについているレバー式のスイッチで、ビットの回転を操作します。レバーを引くと電源が入り、放すと切れます。無段変速スイッチを搭載している機種は、レバーの引き加減で回転速度を調整できます。

◆ 木ネジを締めつける

木ネジの首の部分を指でつまんで木材に対して垂直に立て、ネジ頭の溝にビットの先端をしっかり合わせます。木ネジとビットが一直線になるように支えながら、はじめはスイッチを少し引いて遅い回転速度で木ネジを締めつけていきます。木ネジが自立するようになったら支えていた指を離し、回転速度を上げてネジ頭が木材の面に揃うところまで締めつけます。

◆ ネジ締めのコツ

回転速度を上げたら、インパクトドライバーを力いっぱい木ネジに押しつけるようにします。押す力が弱いと、ビットが外れた勢いでネジの溝を傷めてしまいます。締めつけ終わるまで、力を弱めずに押し続けるようにしましょう。

まとめ
床を張ったり、棚をつけたり、場合によっては壁を作ることもあるリフォーム。また、ウッドデッキやパーゴラ、ウッドフェンス、物置といった外回りの製作。こうした大がかりなDIYで、もっとも多いのがネジ締め作業です。これから家のあちこちに手を入れていこうと思っているなら、パワーがあって作業効率を大幅にアップできるインパクトドライバーは、まず最初にリストアップしたい電動工具です。DIY用なら高い機種でも15,000円程度まで。価格差が3万円以上あるプロ用に比べると、耐久性や精度は劣りますが、使い比べなければDIY用で不満を感じることはありません。基本性能が自分の使用目的に適している機種のなかから、使用頻度や作業量を考えて最適な1台を選びましょう。
ひとつ言えることは、電動工具の性能はほぼ価格に比例します。これから本格的にDIYに取り組むつもりなら、使いやすく耐久性が高い1万円以上の機種を選ぶと良いでしょう。