ペンチの種類と特徴

見た目がそっくりな工具に、ペンチ、プライヤー、ニッパーがあります。どれもはさみのような見た目がとても似ています。基本は2つの金属の棒が一つの軸で組み合わされていて、先端でものをはさめるような作りになっています。工具に関してあまり関心のない人なら、これらのもの全てがペンチだと思っているかもしれません。しかし、用途を含め、実はその違いは意外に少なくありません。そんなペンチ、プライヤー、ニッパーなどについて、使い方や選び方、種類の違いなどを紹介します。

ペンチ、プライヤー、ニッパーの違い

まず、それぞれの違いを簡単に説明します。ペンチは刃の先端でものをつかむことができ、刃の付け根部分では針金やワイヤー、細めのケーブルなどを切断することもできる工具です。代表的なものは電工ペンチと呼ばれるもので、先端部分にはギザギザの刻まれたアゴがあり、がっちりとものをつかむことができます。しかし先端の刃はあまり大きく開くことができないため、つかめるものの大きさに制限があります。次にプライヤーの代表がコンビネーションプライヤーです。ペンチと同じようにつかんだり、挟んだり切断したりすることが可能です。軸の部分がスライドするため、電工ペンチよりも先端部分を大きく開くことができ、太いパイプなどもがっちりつかむことができます。そしてニッパーはこの2つと形は似ていますが、ものをつかむ工具ではなく金属の線やワイヤーなどを切断するための工具です。ペンチとプライヤーは主にものをつかんだり挟んだりするもので、ニッパーは切ることに特化した工具と理解すると良いでしょう。

◆ 電工ペンチ

電気工事などに使われるペンチの代表です。ものをつかむアゴ部分が大きいため精密な作業は苦手ですが、パイプやケーブルをがっちりつかめ、針金やケーブルなどの切断も可能です。先端の開口範囲が大きくないため、太いパイプや厚い金属板などには対応できません。

◆ コンビネーションプライヤー

軸部分のスライド構造により電工ペンチなどより刃先が大きく開き、太いパイプやボルトなどをつかむことができます。固着したボルトやナットをつかんで回したり、熱した金属などをつかむなど幅広く使えます。

◆ ニッパー

銅や鉄などの金属線、ワイヤーなどを切断するための工具です。挟んだりつかんだりするのではなく、切断するための専用工具のため刃が鋭利でハサミのように金属板なども切ることが可能です。刃には電線の被覆などをはぎとるための脱皮穴なども設けられています。

ペンチの種類

ペンチには一般的な電工ペンチのほか、ラジオペンチや圧着ペンチなどがあります。また特定の機能に特化したペンチとして固着したネジやボルトをつかんで回すための専用品もあります。プライヤーにはコンビネーションプライヤーのほかに、ウォーターポンププライヤーやロック機能を持つバイスプライヤーなどがあります。ニッパーは、金属加工用やプラモデル用など樹脂専用があり、それぞれ刃の構造や厚みなどが違っています。樹脂用を金属切断に使用すると、刃が欠けてしまうこともあります。それぞれ、非常にたくさんの種類があり、つかんだり、切断したりする対象の大きさや厚みにマッチしたタイプやサイズがあります。どんな用途に使うのか正しく見極めて選ばないと、役に立たない場合もあるので注意が必要です。

◆ ラジオペンチ

ラジオの組み立てに使われたことがその名前の由来です。先端が細くなっておりハンダ付けなど繊細な作業に向いています。針金を曲げて細かい形状を作ったり、小さな部品をつかんだりすることもでき、細めのケーブルや針金の切断も可能ですが、電工ペンチよりも切断能力は劣ります。

◆ ウォーターポンププライヤー

水道の配管工事などに用いられるプライヤーです。軸の部分がジョイント式になっていて口部分を多段階に開くことが可能です。コンビネーションプライヤーでは対応できない太いパイプなどもしっかりつかむことができます。また開かなくなったビンのフタなどもつかめるので意外にキッチンなどでも重宝します。

◆ バイスプライヤー

ハンドルを握るだけでものをつかんだ状態でロックができるプライヤーです。はじめに挟みたい物の厚みに合わせて口の開け幅を調整ネジで調整し、そのまま握れば固定され手を離すこともできます。ロッキングプライヤーやグリッププライヤーとも呼ばれます。

◆ 特殊ペンチ

なめてしまったり、つぶれてしまい回せなくなったネジの頭をつかみ、ゆるめることができるのが特殊ペンチです。電工ペンチタイプのほかラジオペンチタイプやプライヤータイプなどもラインナップされています。

先端にタテ溝が刻まれておりネジの頭などを強力につかむことが可能です。

つかむもののサイズにあったペンチを使う

ペンチは先端の部分が噛み合うことで、ものをつかむことができる工具です。銅線や針金を切ったり、金属板を曲げたりねじったりなど多くの作業が可能ですが、開く角度や固定機能の有無、力が入れやすいサイズなどの違いがあります。作業によって向き不向きもあり、例えば針金をつかったアクセサリー作りや電子工作なら電工ペンチよりも先端が細く繊細な作業ができるラジオペンチが向いています。プライヤーも、水道管の修理ならやはり専用のウォーターポンププライヤーが適してします。

つかむ対象の太さや厚みにあったペンチ、プライヤーを使いましょう。

まとめ
種類やサイズのバリエーションが豊富なペンチとプライヤーですが、一般家庭であれば150~200mmほどの電工ペンチとラジオペンチがあればほとんどの作業に対応できるはずです。もしそれらでは対応できない作業が必要になったら、専用のペンチやプライヤーなどをそろえると良いでしょう。くれぐれもつかむ対象に合わない工具の使用は避けてください。刃先のカケや軸の破損、怪我の原因にもなりかねません。気をつけてください。