鋸の種類比較


目次
1章:鋸の種類
2章:鋸の選び方のポイント
3章:鋸の使い方
4章:鋸でケガをしないためのポイント
5章:鋸のメンテナンス方法
6章:刃の替え時・交換方法
7章:鋸が錆びてしまった場合の対処法
まとめ


日曜大工・DIYをはじめようと思ったとき、最初に手にする工具といって思いつくものは何でしょう?
金槌(玄翁)と並んで、「鋸(のこぎり)」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?
鋸は、誰もが一度は手にしたことがあるといっても良い、定番の手工具です。

ひとくちに鋸(のこぎり)と言っても、用途や使い勝手、形・大きさなど実にさまざまな種類のものがあります。
誰もが知っている手工具ですが、誤った使用方法をすると、材料や鋸自体を傷めたり、思わぬケガをしたりすることがあります。
そこでこの項では、材料や加工方法に合った、鋸の正しい使い方や選び方、メンテナンス方法などをご紹介します。

1章:鋸の種類

木工用鋸

木工用の鋸は、大きく分けて縦挽きと横挽きに分類されます。縦挽き鋸は木目に対して平行に、横挽き鋸は木目に対して垂直に切断するときに使用します。縦挽きは目が粗く、横挽きは細かい目がついています。縦挽きと横挽きを兼用した鋸もあります。

● 片刃鋸・・・
刃が片側のみについている一般的な鋸です。
● 両刃鋸・・・
一枚の刃の両側に、縦挽きと横挽き用の刃がそれぞれついた鋸です。
● 導付鋸(導突、胴付き鋸)・・・
精密さが必要とされる細工の加工に使われます。
刃は非常に薄いため、背金をつけて補強されています。
● 廻し挽き鋸・・・
曲線を切り抜くときに使います。刃が細かいのが特長です。
● アサリなし鋸(ダボ切り鋸)・・・
アサリ(※1)がないため、きれいな切り口になります。刃は薄くしなやかで、木材に沿わせて切ることができます。埋め木やダボ木を打ち込んだあとの不要な部分を切り落とす鋸です。
● 畔挽き鋸・・・
刃の先が丸くなっているので、板材の途中から材料を切り抜くことができます。

※1

「アサリ」とは鋸の頭の方から見たときに、刃が交互に外側に飛び出ている部分のこと。鋸の厚み+アサリの飛び出し分の厚さで切ることができるため、作業中の材料と鋸の抵抗を小さくすることができ、木屑が外に排出されやすくなる。

多目的鋸

鋸は主に木材を切る道具ですが、最近では竹やプラスチック、金物などさまざまな材料を切るのに適したものがあります。
材料やその大きさによって、適した鋸を選びましょう。

● 金切り鋸・・・
金属の切断に使われます。一般的な鋸と逆に、押したときに材料が切れる押し切り刃が主流です。
● パイプソー・デコラソー・・・
刃の目が細かいのが特長で、塩ビパイプやプラスチックなど、木工用鋸では切りにくいものを切断する鋸です。
● 万能鋸・・・
粗大ゴミなどを分解するときなど、その名の通りなんでも切れると謳った鋸です。
● 糸鋸・・・
刃が糸のように細く、繊細な曲線を自在に切り出すことができます。刃を替えることで木材・金属・プラスチックなどさまざまな素材を切断できます。
● 剪定鋸・・・
庭木の手入れや果樹の剪定などに使用する鋸です。高いところでの作業用に折りたためるものもあります。

2章:鋸の選び方のポイント

用途に合わせた鋸を選ぶことは第1章でご紹介しましたが、同じ種類の鋸でも、鋸刃の長さ(刃渡り)や鋸目の数、持ち手の長さなど、そのバリエーションは多種多様です。
DIY初心者であれば、あまり大きいものや重たいものは避け、刃の交換が簡単な替え刃式を選ぶのが良いでしょう。刃の切れ味が落ちても、刃だけを交換すれば良いので、難しいメンテナンスの必要がなく便利です。替刃式のものは、衝撃焼き入れという加工がされているものが多く、刃の硬度が高くなっています。

鋸には、7寸目、8寸目など「寸目」という表記がされているものがあります。1寸は約3cmで、7寸は約21cm、8寸は約24cmです。この寸法の中に同じ枚数の鋸目が並んでいるとすると、鋸目1枚あたりの大きさに違いが出てきます。
例えば、10枚の刃が7寸(約21cm)と8寸(約24cm)にそれぞれついていたとすると、1枚あたりの刃の大きさは、7寸のほうが2.1cm、8寸のほうが2.4cmとなります。
刃が大きくなるほど、刃の先端から刃の先端までの間隔(ピッチ)も大きくなり、鋸目が荒くなります。このように、7寸目と8寸目では、8寸目の鋸の方が目の荒い鋸ということになります。「寸目」は、刃渡りの長さではなく、目の荒さをあらわす表示と考えて良いでしょう。
刃渡りがミリ寸法で表示されているものや、ピッチを数字で表示しているものもありますので、切る材料・素材に合った鋸目のものを選びましょう。 
初心者や初めて鋸を購入する人は、目の細かい鋸を選ぶと良いでしょう。両刃鋸なら180㎜か210㎜位、片刃鋸なら8寸目や、細工用と記載されているものがオススメです。

3章:鋸の使い方

鋸で材料を切断する上で大切なことは、切る材料が動かないよう、しっかり押さえつけて固定することです。
切断中に材料が動くと、線の通りに切れなかったり、思わぬケガに繋がったりします。必ず作業台と材料をクランプなどで固定するようにしましょう。
切断する位置には、墨線という線を引いておきます。材料を固定し、墨線を真上または真正面から見て切ります。体の位置は、鋸と目線が一直線上になるようにしましょう。
鋸は特別なものを除き、引くときに切れます。押すときの力はあまり必要ありません。

切り方のポイント

墨線と目線の位置を確認します。

鋸刃の根元の部分を墨線に合わせます。一般的には、固定した材料の自分から遠い方から切り始めます。

鋸の柄がおへそに向かうように鋸を引きます。押すときには力は入れません。

切り始めは鋸の刃が滑ったり、墨線からずれたりしやすいので、軽い力で筋をつけるイメージで切ります。必要以上に力を入れるとうまく切れません。鋸の重さを利用して切るようにしましょう。

切り溝ができてきたら、少しずつ力を入れて切っていきます。

力の入れすぎに注意すれば、鋸は自然とまっすぐになってくれます。力任せに鋸を動かそうとすると、刃が材料に引っ掛かったり溝に挟まれたりして、のこぎりが曲がってしまいます。うまく切れないなと思ったら、力が入っていないか確認してみましょう。
縦挽きするときは、鋸を立てて切るとよく切れ、寝かせるとまっすぐに切れます。
鋸を立てて切ると、鋸刃が墨線に対してまっすぐになっているかどうかを確認しにくいため、曲がりやすくなります。慣れるまでは鋸刃をやや寝かせて切ると良いでしょう。

4章:鋸でケガをしないためのポイント

鋸は、正しい使い方をしていれば重大なケガにつながることは稀です。
作業中は材料を固定して動かないようにすること、不要な力を入れないことが大切です。
切断中に材料が動くと鋸も一緒に動きます。材料に手を置いていた場合などは、その反動で鋸刃が当たってケガをすることがあります。
刃が木材などに引っかかったときや切れにくいときなどに、無理に力を入れて引っ張ると、引っかかっていた刃が取れた反動で倒れたり、鋸刃でケガをしてしまう場合があるので注意しましょう。
ケガや材料が滑るのを防ぐため、手袋をするのも良いでしょう。手のひらにゴムなどの滑り止めがついているものを選ぶと作業効率がアップします。手袋は大きすぎると思わぬケガに繋がりますので、手の大きさに合ったものを選びましょう。
ただし、回転する電動工具を使うときは手袋を外しましょう。手袋が巻き込まれたり、吸い込まれるなど重大なケガをする恐れがあります。
その他、不安定なところに置かない、柄が引っかかるようなところに置かない、持ち歩くときなどはカバーをする、折りたためるものは折りたたむなど、基本的なことに注意していればケガの心配はなくなるでしょう。

5章:鋸のメンテナンス方法

鋸が切れなくなる原因には大きく分けて2つあります。1つは錆です。鋸で木材などを切ったあとに、刃の目に詰まっている木屑を放っておくと錆の原因になります。使った後は使用済みの歯ブラシやワイヤーブラシなどで取り除きましょう。
木屑を取り除いたら、乾いた布で拭いて水分をよく取り、ミシン油や工具用の保護オイルなどを塗っておきましょう。長期間使わないときは、古新聞などを巻きつけておくと良いでしょう。保管の際は、湿気の少ない場所で、道具に無理な力がかからないようにすることもポイントです。

6章:刃の替え時・交換方法 

鋸が切れなくなる原因のもう1つは、使いすぎで刃が鈍ることです。
鈍った刃は、目立てという研ぎ直しをすることになります。目立ては難しい作業なので、専門の工場などへ依頼することになりますが、目立て費用は比較的高価なことや目立てをしてくれる業者が少なくなっていることなどから、DIY用として使用するなら新しく購入するのが賢明です。替刃式のものは、新しい刃を購入して交換するだけです。
刃の交換時期は、使い手によってさまざまです。以前に比べて作業効率が悪くなった、切れにくくなったと感じたときに交換すれば良いのです。
切れ味の悪くなる原因には、錆や刃の鈍りの他、誤って金属を切ってしまったり、落としてしまったりした場合などに起こる刃こぼれなどもあります。
このようなことが起こったときを、刃の交換時期と考えて良いでしょう。

刃の交換方法はいたって簡単です。鋸によっても異なりますが、レバー式やネジ式などが主流で、刃の取りつけ部分がフック状になっていたり、ネジで固定できるよう穴があいていますので、しっかりと柄に装着して固定します。
レバーやネジ式でないはめ込み式の刃の交換は、柄の刃の差し込み口金を金槌で叩くと、刃が取り外せます。取りつけるときは、刃を差し込み口に入れて、柄のお尻の部分を木槌で強めに3~4回くらい、刃が金具の中にはまるまで叩きます。柄の部分は木でできているため、木槌で叩くことにより凹んだり痛めたりすることなく、大切に使うことができます。
交換の際は、刃先でケガをしないよう手袋をするか、刃に布を巻きつけた状態で行ってください。

7章:鋸が錆びてしまった場合の対処法

刃が錆びてしまった場合、軽いサビは、ワイヤーブラシや耐水ペーパーなどで研磨すれば落とせます。重症のサビは自分で落とすのは難しいので、そうなる前にメンテナンスすることを心がけましょう。
替刃式の刃は、取り外して温めたお酢に浸してサビを取ることもできます。水分を残さないようしっかりと拭き取り、仕上げにオイルを塗っておきましょう。

まとめ
いかがでしたでしょうか? 鋸は、DIYでは欠かせない木工手工具です。鋸は難しい、危ないと思っている方も多いかと思いますが、正しい使い方を知って実践すれば、危険な道具でも難しい道具でもありません。ポイントを押さえて自分に合った鋸を選び、ぜひ鋸使いをマスターしてください。