土を掘ったり砂利を運んだり、また、冬場には雪かきのときなどにも活躍してくれる便利な道具、それがシャベル(ショベル)、またはスコップです。どちらも、柄の先端にスプーン状の刃が取り付けられた道具のことを指しますが、この2ついったい何が違うのでしょう? あらためて考えてみるとキチンと説明できる方は少ないのではないでしょうか。そんな知っているようで意外に知らないシャベルとスコップについて、その語源や、違いの有無、さらにどんな種類があるのかなどを詳しく紹介します。
シャベル・スコップとは
シャベル(ショベル)とスコップは共に穴を掘る、土などを運ぶといった作業に使用するとても身近な道具です。ほぼ同じものを指していますが、どうやら東日本では片手で使えるハンディタイプのものをシャベル、大型のものはスコップと呼ぶのが一般的なようです。しかし、西日本ではこれがまったくの逆。小さいものがスコップで大きなものをシャベルと呼ぶのだそうです。ちなみに語源を調べてみるとシャベルは英語のshovelから、スコップはオランダ語のschopからきており、共に同じものをさす言葉。つまり語源からみてもその違いは明確ではありません。さらに日本語ではなんというのかというと一般的ではありませんが漢字で円匙と書き“えんし“や”えんぴ“、といいます。ただし現在では、エンピというと植木の移植や園芸作業用に使われる刃幅が狭く先端が薄く鋭い鋤のような道具のことを指し一般的なシャベルやスコップは指しません。つまり、穴を掘ったり土を運んだりするスプーン状の道具は、シャベルもしくはスコップと呼ぶのが定着していますが、その使い分けには明確なルールはないということなのです。
農具の鋤に近く、植木の根切りなどにも便利なエンピ。
JIS規格では明確に区別
どちらで呼んでもかまいませんが、でも実はJIS規格ではシャベルとスコップは、明確に区別されています。まずシャベルは、刃の上部が平らになっていてそこに足をかけて土などに深く押しこめるもの。対してスコップは、刃の上部が曲線になっており足はかけられず、先端がまっすぐになっているもの。役割の違いが明確でシャベルは掘るための道具で、地面を掘るときに力をかける必要があるため先端がとがっていて、刃の肩の部分が平らで足をかけられるようになっています。スコップは穴を掘るのではなく土などをすくって運ぶためのもの。そのため先端がまっすぐになっており、すくった土などが逃げないようになっているというわけです。JIS規格では大きさではなく形でシャベルとスコップは分けられています。ただし、これはあくまでJIS規格。残念ながら一般にこの名称の使い分けが浸透しているわけではありません。ということは結局、シャベルとスコップは、無理に使い分ける必要なないということなのでしょう。
シャベルは肩の部分に足をかけることができ体重を乗せて土などを深く掘ることができます。
先端がまっすぐで刃の面積も大きく、効率的に土などを乗せ運ぶことのできるのがスコップです。
シャベル・スコップの種類
シャベル、スコップには形の違いのほか、大きなもの、小さなもの、雪かきに特化したものなど用途に合わせて様々な種類があります。その中から代表的なものをいくつか紹介します。
◆ 穴開きシャベル
刃先に穴が開いているため軽く、土にさした時にも土ばなれがよいという特徴があります。また、水分の多い場所では穴から水が抜けるので作業性にすぐれています。
◆ 角型シャベル
刃先が真っ直ぐになっているので一度に多くの土砂を掘ることができて、土を効率的に運ぶことができます。刃先が尖っていないので柔らかい土を掘るのに適しています。
◆ 穴掘りシャベル(複式シャベル)
縦穴を掘るための専用シャベルです。二つの刃先がついており、柄を広げると刃先が閉じます。縦に突き刺すことで少ない力で無理なく深い穴を掘ることができます。
開いた状態で刃の部分を土に深く刺し、回してから閉じると深く真っ直ぐの穴を掘ることができます。
◆ 園芸用シャベル(移植ゴテ)
ガーデンニングや園芸用の片手で使える小型シャベルです。土を一度に大量に掘るのではなく苗などの植え穴を掘ったり、苗の移植のときに使用します。
◆ 園芸用スコップ
土すくい専用のスコップです。広く深い形状のため片手でたっぷりと土をすくえます。
◆ ミニゴテ
通常の移植ゴテより小さいため、小さな鉢植えや狭い場所でも使いやすい小型の園芸用のシャベルです。
◆ スノースコップ/スノーラッセル
軽くてやわらかい新雪の除雪に使う専用のスコップがスノースコップです。プラスチック製で軽いので力のない女性やお年寄りにも使えます。先を金属にして強度を上げているものもあります。スノーラッセルは雪を持ち上げるのではなくブルドーザーのように軽い雪を押し出すようにして使います。
まとめ
シャベルやスコップはガーデニングや家庭菜園を楽しまれている方には欠かせない道具です。また雪の降る地域では雪かき用にも必需品です。シャベルなら刃先の鋭いもの、スコップなら面積の大きなもののほうが効率よく作業できますが、重すぎたり、大きすぎると体格や体力に合わずかえって作業が滞ります。シャベルやスコップはそれ単体だけで考えるのではなく、そこに土や雪の重みが加わるということも考え、自分にあったものを選んでください。