ボルトやナットなどを回して、締めつけたり緩めたりす るために使用する工具の代表がスパナです。クルマやバイクの整備を行う方や、DIY を趣味とされている方なら工具 箱にいくつかのサイズのスパナがきっと入っているのではないでしょうか。
似たような工具にレンチもありますが、スパナは主に仮 止めの際や、ボルトなどがある場所が狭くスパナでないと ボルトやナットを回すことができないという際に使用す る工具とされています。その理由とはなんなのでしょうか? 知っているようで意外に知らないそんなスパナに ついて、レンチとの違いや、その正しい使用方法などをご 紹介します。
目次
1章:スパナとは?
2章:レンチとの違い
3章:スパナのサイズ
4章:スパナの構造
5章:スパナの種類
6章:スパナの使用方法と注意点
まとめ
1章:スパナとは?
六角ボルトやナットに適した代表的な工具
スパナは、六角ボルトやナットを締めたり緩めたりするときに使う代表的な工具のひとつです。その特長は先端が開放された構造になっていること。そのため一旦締めつけ たボルトやナットから横にスライドさせるだけで素早く先端を外すことができるので、何度も締めつける必要があ る場合の作業性に優れています。
反対に先端がリング状のクローズド構造になっているレンチの場合は、いちいち上方に抜き取らなくてはボルトやナットから外すことができません。ボルトやナットを繰り返し回転させなくてはならない場合にはその分手間がかかってしまいます。
このように作業性に優れているのですが、レンチと違いスパナはボルトやナットを 2 点でしか支えることができないため、滑りやすく強い力をかけるのには適さないとされています。そのため仮止めやレンチの入らない狭い場所の作業の際に主に使われています。
2章:レンチとの違い
元々は同じ意味の言葉。開放型がスパナ。
日本ではスパナとレンチは明確に別の工具として扱わ れていますが、英語では双方とも、ねじるやひねるといった意味を持っており、ほぼ同じものを指しています。
違いはスパナ(spanner)が英国式の呼び方なのに対してレンチ(wrench)は米国式の呼び方ということ。つまり六角ボルトやナットを回す工具の事をスパナやレンチと呼ぶのです。
しかし、日本では、先端が開放されたものをスパナ、メガネレンチなど先端がリング状になっているものを主にレンチと呼んで区別しています。また、片方がレンチ、もう片方がスパナとなっているものはコンビネーションレンチと呼ばれています。
例外として、ボルトなどをつかむ先端部分の口幅が調整できるモンキーレンチは、開放構造ですが、レンチと呼ばれています。
3章:スパナのサイズ
サイズの合わないスパナはトラブルの原因に
スパナの先端、ボルトやナットなどくわえる部位のこと を「口径」と言います。スパナを見るとこの口径の二面幅のサイズが刻まれているはずです。それが 12 であれば 12mm の六角ボルトやナットに対応したスパナということになります。
両口スパナで、片側の二面幅が 12mm、もう片側の二面 幅が 14mm 場合は「12×14」などと表記されます。
ボルトやナットに対して、この二面幅サイズがあっていないスパナを使用してしまうと、スパナとボルトやナットのかかりが浅くなったり、スパナが滑って外れてしまうことがあるので注意が必要です。
4章:スパナの構造
開放型のためボルトやナットを支えるのは 2 点
スパナは作業性が高いのが特長ですが、レンチとは違って、その構造が開放型のため、ボルトやナットに対して 2 点でしか力を加えることができません。そのため強い力をかけた際にボルトの角を痛めてしまうことがあります。
強くしまったボルトやナットなどを緩める際は、スパナではなくメガネレンチやボックスレンチを使うようにしましょう。
5章:スパナの種類
使い分けることで作業性が向上する
スパナの代表的なものが以下のタイプです。それぞれ 様々な六角ボルトやナットに対応した口幅サイズがそろっています。スパナは通常一本で 2 サイズのボルト・ナッ トに対応しており 12×14 などと呼ばれています。コンビネーションレンチは片方がレンチ、片方がスパナになっているので仮止めと本締めが一本で行えるので作業性に優れています。
- スパナ
- 一般的なスパナまた両口スパナとも呼ばれます。一本でそれぞれが別の口幅を持っており、12×14 のスパナなどと呼ばれています。長さも様々なサイズがそろっています。
-
- 片口スパナ
- その名前通り、一つの口幅を持つスパナです。
-
- 薄口スパナ
- 通常のスパナより薄く設計されたスパナです。通常のスパ ナでは入らない狭いすき間などの作業や、厚みのないナットなどの締めつけや緩める際に重宝するスパナです。
-
- コンビネーションレンチ
- 片側がスパナ、もう片側がリング状のレンチになっているのがコンビネーションレンチです。
-
6章:スパナの使用方法と注意点
15°の角度を上手く利用するのがコツ
スパナは作業性に優れた工具ですが、その構造上ボルトやナットをなめやすいという欠点があります。そのためかならず口幅のサイズのあったものを使用してください。また使う際には慎重な作業が求められます。
まずスパナはボルトやナットに対して必ず平行に使用 します。斜めに咥えさせるとボルトやナットを痛めるだけでなく、スパナが外れやすくなるので注意が必要です。ま た、スパナは 2 点でしかボルトやナットを支えていませんので回す際はあまり力を入れすぎないようにしましょう。
さらに、スパナはボルトやナットがスパナの奥まで突き当たる所までしっかり咥えこませます。浅いとこれもボルトやナットをなめたり、回す際にスパナが外れやすくなるので注意してください。
スパナは柄に対して 15°の角度がつけられています。 狭い場所ではボルトやナットの角度によってうまくスパナにくわえさせられないことがありますが、その場合はスパナを裏に返すとスパナの角度が変わるのでくわえさせることが可能になります。また、裏表を交互に使う事で、片面だけでは締めにくい角度のボルトやナットを効率よく締めることが可能になります。
まとめ
スパナは誰もが 1 本や2本は持っている代表的な工具です。作業性に優れているため使いやすいのですが、その構造上ボルトやナットに対してあまり大きな力を加える ことには適していません。ですから、あまり大きな力で締 めつけようとしたり、ハンマーでスパナの柄を叩くような 使い方は絶対にしないでください。ボルトやナットを痛めてしまうほか思わぬケガにつながることもあります。
固く緩みにくいボルトやネットに対しては、スパナではなくメガネレンチやボックスレンチなどを使用するのがオススメです。