水平機の使い方

壁に棚や額縁などを取り付けたり、フローリングなどの施工やレンガを敷く前に下地をならす時など、日常やDIY作業などの際も、正確な水平が必要となるシーンは多々あります。もしキチンと水平を出さずに適当に施工してしまうと棚は斜めになり本来の機能を果たせませんし、額縁なども単純に見栄えが悪いですね。
また、フローリングの床などの場合は、キチンと水平になっていないと、めまいや吐き気などの健康障害が生じる可能性があります。さらに、レンガ敷きでは水はけなどにも不具合が生じて崩れてしまう可能性もあるでしょう。
そんなことにならないように、キチンとした水平をだすために用意しておくと安心なのが水平器です。
正確な水平や垂直、または勾配などを測ることのできるツール水平器。役立つツールであることはなんとなくわかるでしょうが、実際に使っていないと、どのように測っているのか、また何を選べばいいのか、よくわからないこともあります。そこで、そんな水平器について、その使い方や選び方など基本的な情報を紹介します。


目次
1章:水平器の構造と使い方
2章:水平器の種類
3章:水平器を使う場面
まとめ


1章:水平器の構造と使い方

気泡の位置で水平や垂直を測る

水平器とはレベルや水準器とも言われ、工事やDIYなどの際に使用される水平・垂直・45°などを測定するツールです。様々な物の地面に対する角度を簡単に確認することができ、古代エジプトでピラミッド建設の際にも水準器(水平器)が使われていたそうです。
もっとも一般的な水平器は気泡管水平器とよばれるもので、フレームの一部に、液体が封入されたガラス管(アルコールなどの液体と気泡が封入されたガラス製の密閉管)があります。水平器のフレームを、水平を図りたい物に当てた時にその中の気泡の位置によって水平を調べることができます。複数の気泡管が搭載されていて、水平だけでなく垂直や45度などの角度を計測もできるものなどもあります。

● 気泡管水平器を使った水平の測り方
気泡管水準器は気泡管と使って水平を測りますが、気泡管には複数の標線(基準線)があり、気泡が線のどの位置にあるかで水平や勾配を測ることができます。実際に測る際は、片面だけでなく正確を期すため水平器を反転させて反対の面にした状態でも水平を確認します。
基本は気泡が最も内側の線の間、中央にあれば、測っている面が地面に対して水平ということです。
もし気泡が内側より2本目の線に接していた場合は、測定している物のその面が1/100勾配となっているということになります。
気泡管内の気泡が中央にあればその面は水平。ずれていれば水平ではないということ。
この場合は測定している物のその面には1/100勾配の角度があるということ。
ちなみに1/100勾配とは1m当たり1cm上がる(もしくは下がる)角度の事で1分勾配ともいわれます。2/100に勾配は同じく1m当たり2cm上がる(もしくは下がる)角度の事です。特定の方向に水を流す必要のある排水管等の設備工事ではこういった勾配を測る必要があるため水平器にもこのような機能が必要なのです。また、水平器は水平を測るだけでなく、垂直や45度の角度を測れるものもあります。
柱などの垂直を測る場合は柱の左右前後各面を計測するとより正確な垂直を測ることが可能です。
● 水平器の感度と等級
水平器はどれも同じ性能を持っているわけではありません。その感度や精度によっていくつかにグレードが分けられています。
まず水平器の感度はJIS規格によって一種(0.02)、二種(0.05)、三種(0.1)分けられています。一種の0.02とは水平器から1m先で0.02mmの高低差があれば、気泡が1メモリ移動するという感度の高さを表しています。つまりこの数値が小さいほど感度が高くわずかな傾斜でも測れるということです。
また精度に関してもJISではA級とB級に区分されており、A級のほうがより精度が高い水平器ということになります。ただしA級は検査機関などでの精密測定に必要なレベルであり、DIYなどの工作用であればB級でも精度的には十分です。さらに一般工作用としてA級でもB級でもないものもありますが、そちらでもDIYであれば特に問題はないでしょう。

2章:水平器の種類

サイズや素材、機能などバリエーションは豊富

水平器にはサイズ、形、機能などの違いによっていくつかの種類があります。また数百円で購入できるリーズナブルなものから数万円を超える高精度のものなどそのグレードの差も様々です。100円ショップなどでも購入は可能ですが、より高い精度を求めるならあまり安い物はオススメできません。
水平器はその本体の長さが長いほど、広い面や、長い物の水平を測定できることができるので、床面や、レンガ式の下地、棚や収納ボックスのなどある程度大きいもの、広い範囲の水平をチェックするのであれば大きめの物を選ぶことをオススメします。
とはいえDIY用途であれば、30㎝~60㎝ほどの長さがあれば十分でしょう。精度やグレードに関しては前述したようにJISによる規定がありますのでそれを参考にしてください。水平器の代表的なものをいくつか紹介します。

● 気泡管水平器
一般的な水平器です。150mmや300mm、600mmなど長さのバリエーションが豊富です。気泡管が一つの物から、水平用、垂直用、角度測定用と複数の気泡管が内蔵されているものもあります。またアルミ、鉄、樹脂など素材も様々で、マグネット付きの物なら鉄製ものにくっつけて垂直を測定することが可能です。
● デジタル水平器
気泡管に加えて、測定した値をデジタルで表示してくれる水平器がデジタル水平器です。液晶画面に数字で具体的に値が表されるので非常に便利です。水平だけでなく、垂直や勾配、角度など微妙な値を読み取ることができます。また、ブザー機能などが搭載されているものもあります。この機能があると、棚など微妙に水平を調整しながら取り付けなくてはいけない場合に、気泡や画面を確認せずに音で水平になっているかどうか確認できるので作業性が高まります。ただし、乾電池などが必要とすることと、防水になっていないものも少なくないので屋外作業の際には気をつけなくてはいけません。また、価格が気泡管タイプの水平器に比べると比較的高めです。
● 丸型水平器
気泡管部分だけを取り出したような形をしているのが丸型水平器です。広い面の水平を大まかに確認したいときはこれで360℃の傾きを測定することが可能です。主に機械などにネジ止めした使用するものですがこれを単体で使ってもかまいません。カメラの三脚などについていることもあります。
● 角度測定水平器
勾配や傾斜角度を正確に測れる目盛り付きの水平器です。建築物やパイプの角度などを測ります。土木工事や建築、配管作業などに使用されています。
● レーザービーム付き水平器
レーザーポインターを内蔵した水平器です。通常の水平器のように気泡管で水平を取りながら、レーザーを使用すると測定している面だけでなく離れた場所の水平を出すことも可能です。例えばステレオスピーカーを離して壁に設置する際など、レーザービームを使用すれば簡単かつ正確に同じ高さに揃えて設置することが可能です。またレーザーによって目視で水平が確認できるのでブロックやレンガなどを積む際にとても重宝します。レーザーをポイントで照射するだけでなくラインで照射できるものもあり、壁紙などをまっすぐに貼りたいという時にも役立ちます。
● メジャー付き水平器
水平器にメジャー(コンベックス)が内蔵されたタイプです。工事やDIYの際には水平器だけでなくメジャーも必須です。これがあれば一つで二つの役割を果たしてくれます。
● パイプ測定用ミニレベル
パイプ状の物の垂直を測るための水準器です。V字溝があるのでパイプにしっかりと固定することができます。
● 小型水平器
ポケットサイズの水平器です。精度はあまり期待できませんが、額やインテリアなどのちょっとした物の水平を測ったり、三脚などに取り付けたデジタルカメラやビデオカメラなどの水平が出ているのか素早く確認するのに役立ちます。
● iPhoneの「コンパス」アプリ
手元に水平器がなくても、もしご使用のスマートフォンがiPhoneであれば、実はその中に水平器機能が内蔵されています。iOS12から搭載されているアプリ「メジャー」の中に傾きや水平を計測することのできる水平器機能が内蔵されています。使いかたは「計測」のアイコンをタップしてメジャーアプリを立ち上げ、画面下のメニューにある水平器をタップするだけです。これでiPhoneが水平器変わりになります。水平を測りたい物にiPhoneを添えたり置けば角度を自動的に計測してくれます。機能は簡易的ですが任意の角度を0度としてメモリできるなどなかなか便利です。

3章:水平器を使う場面

こんなシーンで水平器が大活躍

普段の生活で水平器を使用する機会というのはなかなか思いつきませんが、どのようなシーンで便利なのかいくつか例をあげてみましょう。
まずはDIYです。棚やラックなどを設置したり、ガレージや庭などにレンガを敷く際にも水平をだすことは肝心です。水平器は必須でしょう。他にもテーブルやチェアなどをDIYで作製する場合にも天板や座面の水平出しは必要です。完成後に取り付けてしまった脚などを調整するのは難しいので作業中部品のサイズを正確に測るだけでなく、その過程で水平も出ているかどうか必ず確認するようにしましょう。そのために水平器は一つもっておくと便利です。
さらにスピーカーの取り付けや壁紙貼り、手すりの取り付けやポスターや額装のインテリアなどの配置にも役立ってくれるはずです。
高価な三脚にははじめから水準器が内蔵されているものもありますが、ない場合に別途水平器を用意してカメラが水平になっているかどうかを確認するのにも役立ちます。カメラそのものに水平器を添えるのではなく、カメラの雲台のカメラとりつけ面の平面部で計測するといいでしょう。
洗濯機がきちんと水平に設置されているか、これを確認するにも水平器が役立ちます。もともと洗濯機にも水平器が内蔵されているものもありますが、もし使用中の洗濯機のガタつきなどが気になっている場合は一度水平に設置できているかどうか、精度の高い水平器を使って確認してみましょう。
洗濯機は運転中洗濯槽が高速で回転します。水を吸った洗濯物がそこに入るとバランスが絶えず変化するのですが、もしキチンと水平が出ていないとバランスが崩れてガタつきや洗濯機の運転に悪影響が生じることがあるのです。そのまま使い続けると振動によって洗濯機が故障してしまうこともあるので水平はとても重要。本来設置時に調整されているはずですが気になる場合は自分で確認してみてください。
露骨に持ち出すと嫌な顔をされてしまうかも知れませんが、マンションの内覧会などに水平器を持っていくというのも良い方法です。よく床がかたむいていないかどうかを確認する方法として、ビー玉などを転がしてみるという方法が紹介されます。
しかし、ビー玉はベアリングなどと違って完全な球体ではありません。平らな床でも置き方によっては勝手に転がってしまうこともあります。そのため床の水平はビー玉では分からないのです。
しかし水平器ならそんなことはありません。マンションや中古住宅など購入の際には水平器を活用してみるのもいいかもしれません。